前回紹介したリシュモングループ傘下の高級ブランドによる時計の新作発表会「SIHH2009」。後編となる今回は、「伝統と革新」を伝えるカルティエ、オーデマ・ピゲ、A.ランゲ & ゾーネの3ブランドが放った珠玉のニューモデルを紹介しよう。いずれも世紀を超えて伝承される熟練技術者による技の集大成であり、高価格帯となるが、欧州の高級ウォッチとは、まさに次世代のミュージアムピースであり伝統工芸品であることがおわかりいただけるだろう。
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【レポート】 SIHH2009レポート総括編
カルティエやランゲ & ゾーネ、ヴァシュロン・コンスタンタン、ピアジェ、IWCといったリシュモングループ傘下の高級時計・宝飾ブランドによる年に一度の新作発表会「国際高級時計見本市(Salon International De La Haute Horlogerie; SIHH)」がこのほど、スイス・ジュネーブ空港至近にある国際展示会場で催された。
熟練技術者たちの手がける精緻なムーブメント
まずはフランスの頂上ジュエラー、カルティエから。昨年のSIHHで話題を呼んだのが「バロン ブルー ドゥ カルティエ」のニューモデルだった。カルティエならではの気品あるデザインもさることながら、ジュネーブ・シールを取得したムーブメント「Cal.(キャリバー)9452MC」を搭載した点も要因だ。ジュネーブ・シールとは、時計立国スイスの中心地であるジュネーブにおいて、伝統的な技法により作られた精緻なムーブメント1個ずつに付与される厳格な公的認証のこと。時計の心臓部ともいえるテンプごと回転させて、姿勢差による重力干渉を分散させて精度を上げるトゥールビヨン(重力補正装置)を備えたCal.9452MCを今回、現代的な美しさも備えるアールデコ・スタイルのレクタンギュラーケースに納めたのが、「タンク アメリカン フライング トゥールビヨン」。その名は、トゥールビヨンのケージを受ける上部のブリッジが無いため、まるで空間に浮かんで回転しているように見えることに由来する。ケース径は35.8×52mm、18金のピンクゴールドケースで、50時間パワーリザーブ、3気圧防水。予定価格は1,144万5,000円で、秋頃の発売予定。
また、カルティエが時計のマニュファクチュール(自社一貫生産)であることの威信を示すのが、「サントス 100 スケルトンウォッチ キャリバー9611MC」。カルティエが自社開発したムーブメントであるCal.9611MCは、動力源であるゼンマイを2つ備えることで、精度に関係するヒゲゼンマイのトルクを一定に保つように設計されている。
同時計は、カルティエの歴史においても燦然と輝くトピックス。SIHH2009会場でも大きな話題となり、プレスらの眼を釘付けにしていた。表裏がサファイアによるシースルー仕様のため、表からも裏からも熟練技術者が手掛けたムーブメントの美しさを心ゆくまで堪能することができる。
ケースはパラジウム950製で、ブラック・アリゲーターのストラップに、クラスプは18金ホワイトゴールドで、フラップ付き。ケース径は46.5×54.9mm、72時間パワーリザーブ、3気圧防水。予定価格は6,142万500円で、秋頃の発売を予定している。
カルティエの放つ"時の芸術"
超絶孤高の伝統技術に、現代的なエレガントさを加味した意匠により"時の芸術"を完成させるカルティエならではのニューモデルといえば、これを忘れてはいけない。1つのプッシュボタンでクロノグラフ(ストップウォッチ+積算機能付きウォッチ)を操作できるのが大きな特長の「ロトンド ドゥ カルティエ トゥールビヨン シングルプッシュボタン クロノグラフ」だ。
プラチナ950製の45mm径ケースに収められたムーブメント「Cal.9431MC」は、2005年にコンプリケーション(複雑時計)の開発に定評のあるムーブメント・ファクトリー「ルノ・エ・パピ」が、カルティエのために特別に開発した名作。手巻式のマニファクチュールで、本作はシースルーバック仕様のため、ケースバックからもトゥールビヨンなどの機構を堪能することができる。ブラック・フルカット・アリゲーターのストラップに、プラチナ/18金ホワイトゴールドのアジャスタブル ダブル・デプロワイヤント・バックル。同時計は秋頃発売の予定。50本限定で販売され、1本1本に個別番号が入れられるという。72時間パワーリザーブ、3気圧防水で、予定価格は2,559万9,000円。
Photo / Franck Dieleman (C) Cartier 2008