Forstall氏によるiPhone 3.0プレビューは、前半がiPhone SDK、後半にユーザー向け新機能という順番で進行した。
In App Purchase
iPhone SDKで取り上げられたポイントは5つ。まず「In App Purchase」。これはStore Kitフレームワークを用いて、アプリケーション内でユーザーがコンテンツやサービスを購入できるようにする。たとえば、ゲーム内から新しいステージやレベルを購入したり、雑誌アプリ内から定期購読期間を延長するというようなサブスクリプション・モデルが可能になる。ユーザーの購入体験はiTunes Storeと同じシンプルさを実現しており、購入ボタンを押すとiTunes Storeの支払いプロセスが現れる。
Peer to Peer
2つ目は「Peer to Peer」。Bluetoothで周囲のiPhone/ iPod touchを接続し、マルチプレイヤーゲームやコミュニケーションを楽しめる。たとえばバックギャモン・ゲームの場合、マルチプレイヤーを選択すると、同じゲームをプレイしているユーザーの検出が始まり、見つかったら対戦リクエストを送るという具合だ。自動検出にはBonjourが用いられ、Bluetoothのペアリングを行う必要はない。最初は主にゲームで利用されるだろうが、たとえばビジネスソフトでのコンタクトの共有など「ゲーム以外にも幅広く利用できる」とFostall氏は強調していた。
アクセサリ
3つ目は「アクセサリ」。External Accessoryフレームワークを通じて、周辺機器をコントロールするカスタムソフトを作成できる。例として、スピーカーのイコライザー調節やFMトランスミッターの周波数変更が挙げられた。
Maps
4つ目は「Maps」。Map Kitフレームワークを通じてアプリ内にマップを埋め込める。ズームやロケーション、ジオコーディングなど、Google Mobile Maps Serviceの機能をアプリ内で利用できる。
またCore Locationを用いた進路ナビゲーションも開発できる。ただしライセンスの関係からGoogleのマップは利用できないため、開発者が自身でマップを用意する必要がある。
Apple Push Notification
最後は「Apple Push Notification」。アプリが動作していない時でもバックグラウンドから、テキストやオーディオによるアラート/ 通知などをプッシュ配信するサービスだ。これは昨年のiPhone 2.0イベントで発表された機能で、実装に至らずに3.0に持ち越されたことになる。
提供が遅れた理由としてFostall氏は、iPhone/ iPod touchアプリの想定外の拡大を挙げた。わずか2カ月で数千のアプリが登場し、App Storeのダウンロードは1億に達した。加えて開発者のPush Notificationへの関心が高く、スケーラブルに対応できるようにインフラの見直しを余儀なくされたという。遅れはしたが、時間をかけたおかげで、サービスとしてより磨かれたものになっているそうだ。たとえばバックグラウンド処理は、情報のやりとりやコミュニケーションという点では便利だが、バッテリ駆動時間が短くなり、また使用中のアプリのパフォーマンスを引き下げるなど、ユーザーにとってのデメリットが多い。消費電力に関しては、Appleが社内でWindows Mobile端末、Android端末、Blackberry端末などを使って人気の高いIMクライアントを用いたところ、スタンドバイ時間が80%以上も短くなった。効率性に配慮し、Mobile ネットワークごとに最適化されているPush Notificationでは、スタンドバイ時間の減少が23%程度にとどまるという。パフォーマンス維持の具体例は示されなかったが、「試用したサードパーティの開発者からは、すでに大歓迎されている」とFostall氏は述べていた。
これらの他開発者向けアップデートとして、アプリからメール機能を使える「In App Mail」、近接センサー、iPodライブラリーへのアクセス機能、シェイクAPI、オーディオ/ ビデオ・ストリーミングなどが挙げられた |
iPhone 3.0を使ったサードパーティのアプリ例(1):Electronic Artsの「SIMS 3」。In App Purchaseでオーディオセットを購入。iPodライブラリー・アクセス機能で、購入したオーディオセットから音楽を再生 |