――一般ユーザー向けに搭載した機能は他にもありますか?

萩原「撮影モードとして『いち押しショット』機能を搭載しています。この設定になっているとシャッターを押すと自動で連写し、『顔検出』、『まばたき検出』、『ブレ検出』、『笑顔検出』をして、撮影した写真の中から一番いいものを1枚だけ自動的に選んでくれます。その結果ブレがなく、目つぶりせず、できるだけ笑顔の写真を1枚撮影できるわけです。

特に集合写真で便利な機能です。明るいところでは20枚撮影され、その中から最良の写真が選ばれます。集合写真では、被写体の顔のサイズにもよりますが、画面全体に10人程度が写る場合でも大丈夫です。ただこの機能の場合、連写したものを全部見せることはありません。全部見たい気持ちに駆られるかも知れませんがユーザー層も考え、あえて1枚しか保存しない仕組みにしています。しかし必ず1枚はアウトプットされます。全ての写真に目をつぶっている人がいる場合でも、一番目をつぶっている人数が少ないものが選ばれますし、全部ブレていても一番程度の軽い写真が選ばれます。

スローモーションビューもいち押しショットも連写機能を使っているのですが、表向きは"連写"とは見せずにあくまで"1枚いい写真が撮れる機能"としています。これを前面に出したことが製品を作るときのキーポイントでした」

――たしかに従来モデルと比べると初心者にもとっつきやすい印象がありますね。

萩原「細かいところでは、連写と一枚撮影の切替用として、EX-F1やEX-FH20のようなダイヤル操作ではなく、専用ボタンを設けています。ただ、うっかりボタンを押すと連写と一枚撮影が切り替わってしまうため、連写ボタンを押すと演出的にオレンジの枠が液晶に広がっていくアニメーションを入れました。もちろんアイコンでも分かると思うのですが、どちらのモードにいるのかより明らかになるようにしています。

同時期に発売された、動画と静止画を合成する「ダイナミックフォト」機能をもつ「EX-Z400」とは内部のエンジンが異なるため、「ハイスピード機能とダイナミックフォト機能を同時に搭載することはできません」(萩原氏)とのこと。EX-Z400にはCCDを使ったEXILIMエンジン、EX-FC100には高速CMOSセンサーを使用したエクシリムハイスピードシステムを採用しているという

またEX-F1、EX-FH20にはない機能として、このモデルでは連写枚数を設定できるようにしました。1秒間にEX-FH20は最大40枚、EX-F1では最大60枚撮れ、全てを保存します。しかし、たくさん撮影するとその後の保存に時間がかかり、その間に次に撮りたいものが出てきたら撮影できません。そこで1回に撮れる枚数の上限を決めてしまおうと考えました。それが『最大連写枚数設定』です。たとえば連写スピードは30コマ/秒のままで、連写枚数を5枚と設定して撮影しますと、全画像保存してもほぼ1秒で復帰します。一度に30枚撮るより5枚ずつ繰り返し撮影したほうが、一般ユーザーには良い瞬間が撮れるのではないかと考えました。連写にすると動画とは違う静止画ならではの一連の動きがあって、独特の味わいがあります。意外な表情や動きがその中に収まっていたりするので、連写で新しい発見をしてほしいと思います」

――写真の撮り方が変わってきそうですね。

萩原「いずれにしてもハイスピードデジタルカメラは新しい価値基準のカメラです。画素数やレンズなど、従来のカメラの基準ではないところに価値を見出してほしいと思います。ハイスピードデジタルカメラが"写真の撮り方"を変えます。シャッターを押すタイミングに合わせてハイポーズという文化はもういりません。被写体は普通にしていていいんです。撮影する側に任せて、というのがこれからのデジタルカメラの文化なのです」

――本日はありがとうございました。