「ワイン特区」認定が追い風に

ワインプロジェクト ディレクターの池野美映さん

経済誌の編集をしていた池野さんは、もともと「人が好き」「自然が好き」「文化が好き」。それらを集約していった結果、行き着いた先がワインであったという。そうなれば行動は早い。

フランス国立モンペリエ大学で栽培醸造学を3年間学び、フランス国家資格ワイン醸造士(D.N.O)を取得。その後ブルゴーニュなどの醸造所に勤務して帰国。そして、リゾナーレのプロジェクト参加となったわけだ。

「ワインプロジェクト ディレクター」という肩書きだけでは、ピンとこない人もいるかもしれない。基本的には、ぶどうを育てるところからワインにするまでの全般を手がける仕事とのことだ。ぶどうが収穫されるまでは畑と格闘し、収穫されたら今度はワイナリーでワインを仕込む。これはもう、想像を絶する知力と体力を必要とする仕事なのである。 そんなわけで、ワインを造るにはまずぶどうありき、である。山梨といえば、勝沼という日本ワインの銘醸地があるように、ぶどう栽培には適しているはずだ。さらに、2008年11月11日、同ホテルがある北杜市が「ワイン特区」に認定されるという追い風も。つまり、最低製造量の規制が緩和されたため、自家栽培・自家醸造で質のよいワイン造りが可能になったのである。

完全自社生産のワインを目指して

ホテルから車で10分ほど下った下笹尾地区。ここにリゾナーレが管理するぶどう畑がある。標高750m。甲斐駒ケ岳、八ヶ岳、晴れた日なら富士山まで見渡せる高台である。日照量は日本一。何より寒暖の差が大きいため、ph、酸、糖のバランスよいぶどうが採れるという。土壌は関東ローム火山灰であるが、池野さんは土壌よりも、「この気象条件でどの品種を植えるか」が重要だという。

リゾナーレのぶどう畑

ここに、もともとNPO法人が植えていたシャルドネ、メルロー、ヤマトナデシコの600本の苗に加え、ピノ・ノワール、シャルドネ、メルロー(2007年に3,300本、2008年に2,200本)をリゾナーレが新たに植えた。そして2010年、いよいよリゾナーレの敷地内にワイナリーが完成する予定となっている。最終的には年間130,000本のワイン生産を目指し、自社畑だけで採れたぶどうを使うというリゾナーレ独自のワイン造りが着々と進められている。

ヤマトナデシコの苗木

何もかもが揃っている完璧なホテルかと思われたリゾナーレ。そんな中でも同ホテルで働く人々が「何かが足りない」と感じていたのは、「地元の物産を販売し、八ヶ岳文化を発信することで地域の活性化につなげること」ということだったのだ。その手段として、地域性を生かしたワイン造りが選ばれ、そして2010年にリゾナーレは"ワイナリーリゾート"として生まれ変わるのである。