クロスレビューで紹介する「Music Maker 2 Producer Edition」。今回は、実際に同ソフトを使って作曲したサンプル音源を紹介しながら、作曲が容易になった「イージーモード」の作曲手順などを解説していこう。
ボーカル音源ソフト「初音ミク」のブームがキッカケとなり、にわかに音楽作成ソフトが注目を集めている。その一方で、デジタル一眼レフで動画が撮れるようになり、動画のBGMとして著作権フリーの音楽素材がほしいというニーズも高まってきた。これまでDTMは音楽と真っ向勝負するニッチな世界だったが、最近はカジュアルに音楽作成を楽しみたいという層が増えている。MAGIXが3月に発売する「Music Maker 2 Producer Edition」は、そんなライトユーザーに適した低価格DAWソフトだ。
自動作曲、ループ、リミックスで手軽に音楽作成
本ソフトはプロ向け音楽作成ソフト「Samplitude」や「Sequoia」のエンジンをベースに、標準価格1万4800円という低価格を実現したDAWソフトだ。ただし、単に安いからライトユーザー向けというわけではない。PCベースの音楽作成は、1パーセントの閃きと99パーセントの根気だ。MIDIデータの打ち込みやオーディオファイルの編集など、途方もない根気と労力を必要とする。その点「Music Maker 2」は、カジュアルに作曲を楽しめる機能をいくつも搭載。本稿はこうしたお手軽サウンドクリエイション機能を中心に解説していこう。
もっとも特長的なのが「ソングメーカー機能」である。本機能は曲のスタイルと長さを指定するだけで自動作曲してくれるというもの。「Ambient」、「HipHop」、「Techno Trance」といったミュージックスタイルを選び、曲の長さを設定するだけでよい。
本ソフトはオーディオやMIDIの豊富なライブラリを搭載しており、それらを自動的に組み合わせて曲に仕上げてくれる。実行するたびに異なるバリエーションを生成するので、気に入ったフレーズができるまで何度かトライしてみるとよい。また、楽器を個別にオン/オフでき、たとえば「ドラムとベース、ピアノのみのシンプルな構成」といった設定も可能。もちろん、自動生成した曲を編集してオリジナリティを付け加えることもできる。試しに数曲作ってみたところ、動画のBGM用途なら作り立ての曲を編集せずに使えるという印象だ。ここで、実際にソングメーカー機能を用いて作曲した曲を3曲紹介しよう。
ループシーケンスもお手軽音楽作成の強い味方だ。ループシーケンスとは、オーディオやMIDIのループ素材(数小節程度の短いフレーズ)をトラック上に並べ、1曲に仕上げるというもの。前述の通り、「Music Maker 2」はライブラリを収録しているので、ループ素材をドラッグ&ドロップするだけで曲作りが行える。実はソングメーカーもこのループ素材を並べているのだが、ループシーケンスは自分でフレーズを選べるのがメリット。BMP(テンポ)や音程は自動調節してくれるので、文字通りドラッグ&ドロップするだけでよい。無論、本ソフトはDAWソフトという位置づけなので、ミキサーを使った各トラックの音量調整、エフェクトの追加も可能。ユーザースキルに応じてこだわった作り込みが行える。
ループ素材は「サウンドプール」画面で選択する。音楽スタイル、楽器のパート別にループ素材が分類されている。これらをトラックの任意の場所にドラッグ&ドロップしていく |
「サウンドプール」画面はリスト表示と別に「サウンドビジョン」表示が可能。カテゴリーごとにループ素材がグルーピングされており、直感的に素材が選べる。フィーリング重視の選択画面だ |
現在の音楽作成は打ち込み系とループシーケンス系に大別できるが、その中間ともいえるのがリミックスだ。既存の楽曲をフレーズで切り刻み、再構築して異なるバリエーションを作成。手作業のリミックス作成はかなり手間がかかるのだが、それを自動化したのが「リミックスエージェント機能」である。これは既存の楽曲を解析し、自動的にリミックスしてくれるというものだ。リミックスの度合いはメニュー上で選択可能。原曲のテイストを残したミックスから、まったく別物のハードリミックスまで、いろいろなバージョンが作り出せる。ただ今回試用したところ、フレーズのつなぎ目で時折ノイズが発生した。カジュアルに使っている分には気にならないが、本格的に仕上げる場合は生成後にトリートメントが必要になりそうだ。
このサウンド解析を応用した機能がもうひとつある。それが「ハーモニーエージェント」だ。既存の楽曲からコード進行を解析し、ギターのタブ譜で表示してくれる。お気に入りの曲をハーモニー解析して、オリジナル曲作成に役立ててみてはどうだろう。