--これまで離陸しなかったモバイル広告が成功するには、何が必要だと考えますか?

広告は"許容"の世界だと思っています。消費者は、自分にメリットがない、関連性のない広告に耐えられません -- つまり、許容しません。モバイル広告が成功するには、消費者を自分側につけてバリュー(無料通話やSMSなど)を提供することです。すると、広告は"許容"から、便利なもの、うれしいものに変わります。

フォーマットも考えました。既存のメディアでの広告は、上質で高級感のある写真を利用します。モバイルではこのアプローチは通じません。モバイル広告はメッセージからスタートします。そこで、Blykでは、テキストベースのSMSや写真付きMMSのようなシンプルな広告フォーマットを利用しています。

たとえば、McDonald'sが「今日はとてもいい天気ですね。午後を満喫した後は、お近くのMcDonald'sにお立ち寄りください。夕方7時までにこの画面を提示すると、ドリンクが1割引となります」というようなメッセージを送る、といったイメージです。H&Mのようなアパレルなら、「今週金曜日に新作が入荷します」というより、「最新コレクションを一足先に見たいですか?」とプレビューを見せる、あるいは「木曜日夜の限定プレセールに招待します」と呼びかける、これは対話的です。実際、広告主は、顧客と対話を持ちたがっているのです。

広告主には、ほかにもメリットがあります。Blykはオペレータのネットワークを利用するMVNOとして展開していますが、技術プラットフォームは自前のものです。このプラットフォームは、広告と関連性という特定の目的に合わせたもので、広告主はカスタマイズしたコミュニケーションを効果的に配信できます。現在、モバイルでキャンペーンをするとなると、オペレータと15 - 30回は電話でやりとりが必要といわれていますが、我々は電話1本で応じることができます。

--どのような企業がBlykで広告を展開していますか? どのようなキャンペーンがありますか?

当初、広告主約40社で開始しました。現在、100社以上の企業/団体がBlykで広告キャンペーンを打っています。エンターテインメント、旅行、金融などの企業だけでなく、政府機関の中央情報技術局もBlykを利用しています。

Penguin Booksの『Slam』のキャンペーン画面

たとえば英Penguin Booksは、作家Nick Hornby氏の最新作『Slum』でBlykを利用しました。本の表紙を壁紙のほか、有名な俳優、Nicholas Hoult氏が最初の章を朗読したものを無料でダウンロードできるようにしました。本のプロモーションに音声が使われた珍しい例といえます(笑)。このときのレスポンスレートは67%でした。

--米Google、米Yahoo!などがモバイルに進出しています。これらネット企業は、モバイル検索を通じて広告を強化すると予想されています。また、Nokiaも「Ovi」を通じて、サービス戦略を拡大していまし、オペレータも積極的です。モバイル広告の競争をどのように見ていますか?

GoogleやNokiaは競争相手と思っていません。各社はそれぞれ自社にとって適切なアプローチでモバイル広告を展開しようとしてます。オペレータは我々を補完的なパートナーとみているようです。

PCの世界では、1990年代後半にクリックスルーが大ブームとなりました。Googleがその後、関連性をもたらし、ネット広告の売上げが急増しました。

モバイルでもこれが起こります。ですが、バナーではありません。モバイル検索かもしれません。ですが、モバイル広告にインターネットは必須ではありません。携帯電話での広告はPCと異なります。PCでは、画面の隅にバナーがあっても気になりませんが、携帯電話では違います。ユーザーは携帯電話はパーソナルなものであり、邪魔されたくないと思っています。

私個人は、メッセージというモバイル特有かつ独占的な特徴をベースとすべきだと考えています。さらには、コミュニケーションは双方向であるべきです。このようなことから、Blykのようなメディアがモバイル広告において独占的要因になると信じています。オーストラリア、クロアチアなどで、Blykのビジネスモデルを真似する企業が出てきています。これは、関連性とメッセージというわれわれのアプローチが評価された証拠だと見ています。

データを紹介しましょう。我々のレスポンスレートは平均25%です。広告を見ただけではなく、クリックした、メッセージに回答した、コールセンターに電話をかけた、などなんらかのアクションを起こした比率です。(PCベースの)オンラインキャンペーンの場合、レスポンスレートが2.5%であれば、成功といわれています。これを考えると、我々の数値は驚異的といってもいいでしょう。