PayPalユーザーは少ないが、Amazon利用者の多い日本での展開に期待
Amazon FPSはサービス事業者がオンライン決済を行ううえで必要な機能セットを提供する。サービス事業者は自身の構築したサイト上で決済システムのみFPSのAPIを利用するのもいいし、あるいはJungleDisk.comのようにインフラそのものをAWS上に構築してしまうことも可能だ。いずれにせよ、高い信頼性が必要な決済システムとその管理をAmazonに委託してしまうというのがFPSの意味するところとなる。
AmazonではFPSの利用形態に応じて5つのQuick Startパッケージを用意している。各パッケージはFPSの機能を理解するうえでの特徴を備えており、これらを比較することで概要を知ることができる。
Amazon FPSで提供される5つのQuick Startパッケージ
Basic | オンラインストアや募金における一括払い |
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Advanced | 月次払いなどの定期払いや遅延払いの処理。サブスクリプションや従量課金向け |
Marketplace | 2者間の送金における手数料徴収。マーケットプレイスの構築など |
Aggregated | 複数のトランザクションを一括処理。オンライン楽曲購入など少額課金向け |
Account Management | アカウントの活動状況やトランザクションの明細管理 |
前述のサンプルサイトにもあるように、「一括払い」「定期的な料金徴収」「従量課金」「手数料徴収」「少額課金」といった課金の基本システムをFPSでは備える。またこれらは基本パッケージだが、FPSを利用するためのAPIやSDK、関連ドキュメントやサンプルコード群が公開されているため、少し実力があればより細かな支払いシステムの構築も可能だ。
システムの各パラメーターは調整が可能で、料金回収を確実に行うために一定期間内あるいは単一トランザクションにおける支払金額の上限や下限を設定できる。また先日、日本のある事業者がWebサービスの利用者から何の通告もなしに多額の利用料を引き落とした件が問題となったが、Amazon側ではこうした行動に対しても規制を敷いている。例えば、定期的に料金を支払うオプションを利用者が選択した場合、サービス事業者側がむやみに金額を引き落とせないように支払金額の上限が設定されている。これを超える料金請求が発生した場合、利用者に逐次確認を求めるというプロセスが必要となる。
こうした仕組みは大手サービス事業者にとっては利用者の選択可能オプションが増えることで利用者増加につながり、中小事業者にとってはシステム維持管理の手間、そしてなにより信頼性の面で大きなメリットを享受できる。利用者側にとってみれば、ストアごとにアカウントを作成する必要がなく、かつ必要最低限の情報のみをサービス事業者に提示するだけでいいという、個人情報管理の面でメリットがある。いわゆるOpenID的な使い方が可能となる。
現時点では米国で正式サービスが開始されたばかりであり、日本(日本円)でのサービス提供時期や価格プランなどはまだ提示されていない。だが米国ほどPayPalが普及しておらず、一方でAmazon.co.jpの利用ユーザーが多数いることを考えれば、今後の日本での普及シナリオに大きな期待が持てるサービスだといえるかもしれない。