「Microsoft Office Excel 2007」(以下「Excel」と略)は分類上は一応「表計算ソフト」ですが、とても多機能なため使う目的は人それぞれです。例えば、計算はしないが文字や数字を並べて整理するために表にする、表にはしないがとにかく計算する、プレゼンテーションやレポート用にグラフを作る、一覧表形式でデータベースを作る、など千差万別です。

ですから、プログラミング言語のように初歩から系統立てて使い方を勉強するというユーザーは少なく、自分の目的のために必要な操作だけは習得していても、それ以外の使い道や便利な技があるということに気付いていないユーザーが多いのではないでしょうか。

本連載ではExcelに関する「○○すれば楽に××できますよ」という技をていねいに手順を追って紹介していきます。先述したように、ある人にとっては「それは当り前だよ」という技かもしれませんが、別の人にとっては「それは気付かなかった」という技かもしれません。本連載で紹介した技のいくつかが少しでもみなさんのライフハックに役立てば幸いです。

注意:本稿ではWindows Vista環境にてMicrosoft Office Excel 2007の動作確認を行っています。

「名前を付け」れば「意味がわかりやすく」なる

「VGN-CR62B/N」。これはいったい何のことだかわかりますか? アルファベットと数字の羅列だとどうも想像しにくいですね。「SONY VAIO type C ゴールド」。これならどうでしょう? 実は今この原稿を書くのに使っているPCの型番なのです。カタログに載っている写真やTVCMを見て記憶に残っている人なら、イメージしやすくなったと思います。意味のある単語になるとわかりやすさが違いますよね。

今度はExcelで考えてみましょう。セルの参照(位置)をあらわすのに「列」(横方向の座標)をアルファベット、「行」(縦方向の座標)を数字で記します。例えば「A1」(列・行、つまり横・縦の順で表記する)、あるセルから別のセルまでの範囲なら「A1:B2」などです。位置を特定するにはこれでよいのですが、そのセルにどんな意味の値が入っているのかはこれだけではわかりません。

Excelでは次のものに名前を付けて意味をわかりやすくすることができます。

  • セル
  • セル範囲
  • 隣接しないセル範囲
  • Excelテーブル ※以前は「Excelリスト」と呼んでいたものです
  • 定数
  • 数式

わかりやすい名前を付けておけば、複数人でワークシートを使う場合に便利ですし、作成した本人でも時間が経てば意味を忘れてしまうことはよくありますから、その時に思い出すヒントにもなるはずです。

名前を付ける(名前を定義する)方法は4つあります。

  • [名前]ボックスを使う
  • 既にセル入力されている文字列を使う
  • [新しい名前]ダイアログボックスを使う

「セル」「セル範囲」「隣接しないセル範囲」に名前を付ける

今回は「セル」「セル範囲」「隣接しないセル範囲」に[名前]ボックスを使って名前を付ける方法と名前の活用法を紹介します。

名前を付けるには次の手順で操作します。

  1. セル、セル範囲、または隣接しないセル範囲を選択状態にする
  2. [名前]ボックスをクリックする
  3. 付けたい名前を入力する
  4. [Enter]キーを押す ※[Tab]キーでは確定しません

隣接しない複数のセル範囲を選択するには、最初のセル範囲を選択し、[Ctrl]キーを押しながら次のセル範囲を選択します。これはWindowsのフォルダ操作でファイルアイコンを飛び飛びに選択状態にするのと同じやり方です。

このように飛び飛びなのが「隣接しないセル範囲」です。斜め方向はマウスドラッグで選択することはできません

または、最初のセル範囲を選択してから[Shift]+[F8]キーを押して、隣接しない別のセル範囲を選択に追加します。追加を終了するには、[Shift]+[F8]キーをもう一度押します。

[Shift]+[F8]キーを押すと、隣接しないセルを選択して範囲に追加できる状態であることを示す「コマンド 選択範囲に追加」がステータスバーに表示されます。もう一度[Shift]+[F8]キーを押すまで有効です

[名前]ボックスは数式バーの左横にあります。ここは「C4」のようにセルの参照(位置、座標)が表示されるだけの場所だと思っていた人も多いのでは? 例では「D5」セルに「総計」という名前を付けました

名前の制限

先ほどの例で示したように名前に日本語(漢字や全角文字)も使えるのですが、ある程度の制限があります。これは今回の「セル」「セル範囲」「隣接しないセル範囲」に限りません。

  • アルファベット、数字、記号の全角・半角は区別されない
  • アルファベットの大文字・小文字は区別されない
  • 「A1」「B2:C3」「Z$100」「R1C1」 などの名前は使えない

セル参照と区別がつかなくなるからです。

  • 名前の先頭には、文字、下線「_」、円記号「\」しか使用できない

つまり数字や(下線 、円記号以外の)記号はダメです。

  • 一文字だけの「C」「c」「R」「r」は名前として使えない

「C」はアクティブセルのある列(Column:縦方向)、「R」はアクティブセルのある行(Row:横方向)を表す特別な文字としてExcelで予約されているので。

  • スペースは名前の一部として使用できない
  • 名前の文字数は半角で255文字まで

制限にひっかかる名前を[名前]ボックスに入力すると、このように警告されます

数字を名前の先頭に使うことはできませんが、代わりに下線「_」を先頭につければよいでしょう。例えば「1月の合計」は「_1月の合計」のように。

単語の区切りにスペースを使うことはできませんが、代わりに、下線「_」やピリオド「.」を使えばよいでしょう。 例えば「山田 1月」は「山田.1月」のように。

B2セルを選択しておいて[名前]ボックスに「C」を入力し[Enter]キーを押すと...

エラーにはならず、アクティブセルのある列(縦方向)全体が選択されます。同様に「R」なら行(横方向)全体が選択されます