薬、ワクチンの問題とは?
新型インフルエンザが話題になる際、必ず取り上げられるのが、タミフルなどの薬やワクチンである。タミフルは新型にも効果があるのか疑問視されることも少なくない。鳥インフルエンザには今のところ有効で、政府は「効果があることを前提に」備蓄しており、タミフルが効かない場合も考慮して、吸入薬のリレンザも蓄えているという。ただし、タミフルの備蓄量(人口の22%)が少ないため、今後、増やす予定となっている。
従来のインフルエンザに関しては、新薬の開発も進んでいる。1回の吸入でタミフル5日分の効果が得られる(データ上の結果)吸入薬が開発途中であり、来年か再来年には利用可能になるのではないかと言われている。ワクチンの研究も進展しており、5、6年効果が持続するものが開発中だという。これは新型も防ぐ可能性が期待されている。ただし、完成時期はまだ明らかにはなっていない。
鳥インフルエンザの意外な? 真実
新型インフルエンザになる可能性が最も高いとされる鳥インフルエンザは、現在、鳥からヒトへH5N1ウイルスが感染した「警戒期」。2006年5月には、インドネシアで7名の患者が集団発生しており、限定的にヒトとヒトの間で感染があった疑いももたれている。鳥インフルエンザウイルスによる現在の致死率は60%と高いが、ウイルスは致死率が低下しないと拡大しない。つまり、症状が軽くて、動くことができる患者がいないと感染は広まらず、このまま致死率が60%ということはないという。ウイルスは「ヒトに慣れる」と致死率は下がるとしており、鳥インフルエンザウイルスの予測される最大致死率は2%と見られている。
濱田氏によると、2006年のインドネシアにおける鳥インフルエンザの集団感染発生時は患者数が100人を超えたものの、さまざまな対応により、2008年は40人程度まで減っているという。この傾向より、鳥インフルエンザウイルスがヒトには適合しにくいとの見方や鳥インフルエンザの流行は沈静化しつつあるという見方もある。
一番怖いのは、過度の不安と安堵感
だが現在、連日の報道などから、新型インフルエンザに対して過度の不安を抱く人は少なくないだろう。最後の「新型」インフルエンザであったホンコン風邪が流行してから40年。鳥インフルエンザほど強力ではないかもしれないが、新型インフルエンザはいつ発生しても不思議ではない。
一時の流行のように新型インフルエンザへの危機感が薄れることを、濱田氏は警戒する。SARSの時のことを考えてみてほしい。あれだけ騒がれたのにもかかわらず、当時のことはすでに忘れ去られていると言っても過言ではない。
セミナーは「海外感染症セミナー」と題されていたこともあり、参加者には商社や旅行会社などの関係者が多く、海外赴任先で新型インフルエンザが発生した際、残留、退避の判断基準も述べられていた。濱田氏は同セミナーの最後を「新型インフルエンザ対策は、『台風対策と同じ』」と締めくくる。インフルエンザの猛威が騒がれているが、全般的に感染症対策を日常的に意識し、行動することが、今後も必要不可欠なのである。