1月29日、ジェイティービー主催の「海外旅行感染症セミナー」が東京都港区で開かれ、海外におけるさまざまな感染症とともに、気になる新型インフルエンザについても最新の動向が報告された。鳥インフルエンザ(H5N1型)は沈静化し始めているとの興味深いレポートもあり、参加者は熱心に耳を傾けた。

新型インフルエンザの現状

120名定員の会場は満席となり、感染症、とくにインフルエンザに対する関心の高さがうかがわれた。セミナーではまず、渡航医学センター・西新橋クリニックの大越裕文院長が、海外渡航者の健康トラブルや予防接種について解説。感染症全般についての予防策を紹介した。

濱田篤郎所長代理。同氏は東京慈恵会医科大学卒業後、留学。東京慈恵医科大学・熱帯医学教室講師を経て、現職

続いて、独立行政法人労働者健康福祉機構・海外勤務健康管理センターの濱田篤郎所長代理が講演を行った。濱田氏は感染症などを専門とする医師で、2004年、現職に就いている。

濱田氏は最初、日本政府による新型インフルエンザの人的被害予測を報告。政府予測では、国内の死亡者は64万人とされている。通常のインフルエンザでの年間死亡者数は6,500人ほどなので、64万人という数字は脅威だ。また、この死亡者数は感染率が25%として試算されたもの。数値は今後、見直される予定で、おそらく50%ほどになるのではないかという。そうなると死亡者数は120万人と倍増することが予測される。

日本政府の対策は?

現状から見る限り、新型インフルエンザはインドネシアで発生する可能性が高いという。「パンデミック(pandemic、感染が流行した状態)」となった場合、日本政府はどのような対応をするのだろうか? 海外で患者が発生した場合、まず検疫の強化が図られる。水際で国内への感染を食い止めようということだが、現実的に考えて、ウイルス侵入の時期を2~4週間遅らせるのが精一杯だと予想される。

国内で患者が発生した場合は、患者の隔離など早期に封じ込めが行われる。それでも最短で3週間後には、パンデミックとなってしまうそうだ。医療対応、外出の制限など拡大防止策が実施されることになる。また、新型インフルエンザにはワクチンが有効とされるが、ワクチンはパンデミックにならなければ作ることができず、ワクチンの流通までには6カ月近い時間が必要とされる。つまり、パンデミックとなった場合は、半年間、待つしかないわけだ。