願いを現実のものにすべく、次に訪れたのは宮崎県屈指の観光スポット「青島」。周囲約1km、高さ6mほどの小さな島には「青島神社」がある。青島神社には、古事記や日本書紀に記される伝説「海幸彦・山幸彦」の山幸彦として知られる彦火火出見命(ヒコホホデミノミコト)と豊玉姫命(トヨタマヒメノミコト)、塩筒大神(シオヅツノオオカミ)の三神が祀られている。伝説で、彦火火出見命と豊玉姫命が結婚したというラブストーリーがあることから、縁結びの神社としても有名だ。伝説ではなく、現代では1962年に今上天皇・皇后が皇太子・皇太子妃時代に訪問されたことをきっかけとして、1960~1970年代は新婚旅行先としてのメッカとなった。その後は一時ほどの盛り上がりには欠けていたようだが、最近再び恋愛スポットとして注目を集めつつあるそうだ。ということで、ここを今回の女子力UPを図る旅の終わりとして、最後の願掛け(?)に挑むことにした。

青島へと続く「弥生橋」の袂からは青島の全景を捉えられるのだが、ひと目見てこんもりと茂る木々の多さに驚く。この先にあるのは日本?と思えるほど、南国ムードがムンムン。ちなみに、青島神社の境内は青島全域とも言われている

(左)橋を渡るところにある石碑「青島神社」。そこでカップルに声をかけられ、記念撮影を頼まれ、私も記念に一枚(ひとりで)。って、何だかむなしい……(上)朱が南国の空の色にマッチしている鳥居。右側には「鬼の洗濯板」と呼ばれる岩がある。約1000万年~800万年前の地層が侵食によりこのような形状になった。「青島の隆起海床と奇形波蝕痕」として天然記念物に指定されている

狛犬と一緒に海を眺める。砂浜のように見える海岸は、すべて貝殻の破片。この貝殻が鬼の洗濯板の上に蓄積することで、青島は形成されたという

海岸の貝殻は波の浸食によりさまざまな形に変形しているのがおもしろい

本殿に向かって階段を上り、拝殿の右にはさらに奥に続く小径がある。覗いてみると、うっそうと木々が茂っている。青島には熱帯・亜熱帯の植物が20種類以上生息しており、中でもビロウ(ヤシ科の植物)大群落は「青島亜熱帯性植物群落」として特別天然記念物にも指定されている。この小径は、大正天皇が御成(参拝)された際に整備されたことから「御成道」と呼ばれているそうだ。60mほどの小径を一歩踏み込むと、そこはまるで東南アジアのジャングルのようだ。

さらに進むとぽっかりとした空間が開け、そこに「元宮」がある。この元宮は青島のちょうど中心にあたり、周囲からは弥生式土器や獣骨などが出土したという話から、ここがその昔から聖地であったということを意味する。元宮の背後には、土器のお皿(天の平瓮)を投げて吉凶を占うという投瓮所(とうかしょ)がある。そして、そのすぐ脇には「夫婦ビロウ」と呼ばれる、根本が仲睦まじく一緒になっているビロウが2本立っている。このビロウは御霊木で鈴を鳴らすための縄が下がっているのだが、そこに"こより"を結ぶことができる。こよりにはいくつか色があるが、良縁を意味するのは桃色だ。

本殿正面から。この右側に小径がある

御成道を一歩進むとまるでジャングル! 道の先には元宮が見える

元宮。この周囲だけは何もないので、神秘的な雰囲気が漂う

投瓮所から投げる土器が中央の磐境に納まれば心願成就、瓮が割れれば開運厄祓だそう。恋の行き先を占ってみては?

色とりどりの"こより"が結ばれている夫婦ビロウ。中でも一番多い色はやはり桃色。もちろん私も桃色を結んできました(笑)

不思議な雰囲気を持つ元宮を後に社務所の前で、ふと「天の井」という看板が目に入る。足を止めてよく見ると、海の上にあるのに真水の井戸だとのこと。傍らにある説明を読むと、玉の井とは古事記において海神の宮で豊玉姫命の侍女が彦火火出見命と出会う場面に描かれる泉のことであるという。そして、願い符に願いを書いてこの水に入れるとその願い事が叶うそうだ。

海の上にあるのに真水が湧き出る不思議な玉の井。願い符は水に入れるとサッと溶ける

青島神社で縁結びにご利益がある特殊なお守りを見せてもらった。「神びな」は、夫婦びなまたは"願かけびな"とも呼ばれ、結縁や安産、病気平癒家府安全、交通安全など、あらゆる願いをかけられる

神話や伝説をもっと知りたい場合は、社務所の向かいにある「日向神話館」を訪れてほしい。天孫降臨から神武東征までの神話の世界を12の場面、30体の精巧な蝋人形で再現している(拝観料:大人600円)

気がつけば日も暮れていた。亜熱帯植物などで南国の雰囲気を持ちながら、その一方で神秘を感じるさまざまな場所や現象が潜んでいる青島神社。よこしまな気持ちでスタートした宮崎の恋愛スポット巡りだが、高千穂、日向市、青島で数々の恋愛&スピリチュアルスポットを訪れてその場所に立つと、日常から離れて自分自身と素直に向き合うことができた。恋愛だけでなく、これから私は人とどう結びついていきたいのかということを本気で考えるきっかけとなった。果たして当初の目的どおり私の女子力がUPしたのかはこれからのご利益次第(?)だが、冬のあとに必ずやってくる「春」に期待したい。恋愛成就や縁結びはもちろん、何かに向かって新しい第一歩を踏み出すきっかけを宮崎で探してみてはいかがだろう。

日の出が美しいリゾートホテル「青島パームビーチホテル」に泊まる

今回青島で宿泊した「青島パームビーチホテル」は、ほぼすべての客室からオーシャンビューを眺められるのがうれしいポイント。特に日の出は青島のシルエットがゆっくりと浮かびあがり、昼間とは違った島と海の表情が楽しめる。温泉の大浴場やプール、チャペルなどの設備も整っているので、プライベートな感覚を保ちつつも気軽に楽しめるリゾートホテルとして、サーフィンが目的のカップルや子供も一緒の家族旅行など幅広い年代にフィットするはずだ。

ホテルの全景。白を基調とした建物の客室は扇状に配置されており、ほとんどの部屋はオーシャンビュー

客室の1例であるツインルーム。窓から見える日の出の価格はプライスレス!なくらいに美しい

日向市・青島神社へのアクセス方法と宮崎の交通事情

■日向市
宮崎空港(JR九州特急にちりん・2,290円、約1時間)→日向市
■日向市でのアクセス
「海の駅ほそしま」は路線バス(200円)でロックタウン日向まで行き徒歩約10分 「願いが叶うクルスの海」はタクシーを使って日向市駅から約20分
■青島神社
宮崎空港(宮崎交通路線バス・460円、約20分)→青島→青島神社(徒歩約10分) 宮崎空港(JR九州日豊本線)→南宮崎駅(JR九州日豊本線/日南線・390円、約30分)→青島→青島神社(徒歩約10分)

東京から宮崎へのアクセスは、飛行機が便利。ただし、高千穂を訪れるなら宮崎空港よりも阿蘇くまもと空港の方が近い。なので、例えば阿蘇くまもと空港→高千穂→日向市→青島→宮崎空港といったルートを辿ると効率的に移動できる。宮崎のどの観光地も公共の交通手段は少ないので、バスや列車を主に使う場合は時刻表などで事前にスケジュールを決めておいたほうがよいだろう。なお、下関+九州内の一般路線バス・高速バスが乗り放題となるお得なパス「SUNQパス」の利用もオススメ(3日間乗り放題で1万円、4日間1万4,000円)。