国連ランキングトップのスウェーデンの電子政府

政府の行政オンライン化の取り組みはどうだろうか。

政府は現在、2010年までにシンプルかつ効率のよい行政サービスを目指すことを目標に掲げている。2007年末の時点で、市民向け/法人向けの両方で情報の75%が完全にオンライン化されている。この割合は現在、9割近くになっているとHansson氏は見る。政府は市民にオンラインの利用を呼びかけた結果、電子政府サービスを利用する市民の割合は5割を上回るレベルだ。

これら取り組みが評価され、国連が先に発表した電子政府に関する調査書「2008年度 電子政府調査」で、スウェーデンは電子政府対応度でトップとなっている。

現在の課題は、完全電子化。現時点では、記入が必要なフォームの場合、ダウンロードして記入し、郵送という手順をとるのが主流。これをすべてオンラインで行うため、インターネットでの認証システムであるeIDの利用を進めているところだ。

スウェーデン政府は、2005年10月よりICチップを搭載したeIDカードを発行しているが、このカードは義務ではない。市民がよく利用しているのは、郵便局や銀行が発行するIDだ。これらの発行体が提供するeIDの多くはソフトウェアベースで、市民はこれをダウンロードして利用する。

政府は、これらIDカードの発行体と認証ソフトウェアを介して連携し、行政サービスへのアクセスを提供している。eIDを利用する行政サービスには、確定申告、運転免許書の申請/更新手続き、社会保障機関の児童手当などがある。政府は、市民からeIDを利用した行政サービスの利用があれば、発行体に手数料を払う。これは、単純に見ると、利用者が増えれば政府の手数料支出が増えることになる。総合的に見た収支は明かされていないが、小規模な自治体の場合、行政手続きのオンライン化に後ろ向きになることも考えられる。

Hansson氏によると、政府は現在、複数の発行体があることやセキュリティ、利用勝手などで問題があると判断し、行政開発を担当する機関であるVervaに調査と提案を要求しているという。Vervaの報告書を受けた後、政府は何らかの対応策をとることになる。

電子化の取り組みでは、eID以外の手段も用意している。たとえば、2002年からeTaxを導入している国税庁では確定申告などの税申告を電子的に行う手段として、電話とSMS、PINコードを利用した認証も提供している。これらは、簡単な申告に利用されており、eIDをあわせると、税申告の50%近くが電子的手段に移行しているという。eIDの利用は2007年、約30%増加したと報告されている。

このほかにも、ヘルスケア分野では病院、医療機関などをネットワークで結んだ「Sjunet」が知られている。