スウェーデン産業・エネルギー省 通信大臣オフィス オフィス ポリティカルアドバイザー Henrik Hansson氏

スウェーデンは、これまでの"福祉の国"のイメージに加えて、ICT国家としての知名度も上げている。世界競争力(世界経済フォーラム)やEビジネス(Economist Intelligence Unit)などのランキングで、スウェーデンは、デンマークやフィンランドなどの他の北欧諸国とともに上位の常連。インターネットと携帯電話の普及率はトップレベルで、行政のオンライン化も進んでいる。

スウェーデンのもうひとつの顔が、イノベーションだ。Skype(米eBay傘下)のNiklas Zennstrom氏の出身地であり、MySQLはスウェーデンに拠点を選んだ(その後、米Sun Microsystemsが買収)。首都ストックホルムの郊外シスタには、欧州のシリコンバレーといわれるKista Science Cityがあり、約150社のベンチャー企業の活動拠点となっている。

「ICTは国際競争力に不可欠な、遺伝子要因のようなもの」というのは、スウェーデン 産業・エネルギー省で通信担当大臣のポリティカルアドバイザーを務めるHenrik Hansson氏だ。2008年10月末、スウェーデンを訪問し、スウェーデン政府のICT政策についてHansson氏とKista Science Cityのマーケティング担当者に話を聞いた。

ICTは基本インフラ - ブロードバンドの普及状況

スウェーデンは、国家としてはじめて電子メールを送った国だ。1992年、当時首相を務めていたCarl Bildt氏が米国の当時の大統領、Bill Clinton氏に電子メールを送ったのだ。Bildt氏はICTに並々ならぬ興味を持っており、その将来に大きな期待を寄せた。その後もさまざまな機関でICTのアジェンダが敷かれたという。電子政府では2001年、「24時間対応の行政」という構想を打ち出している。

現在、ICTインフラを担当するHansson氏の部署には、大臣のアドバイザとしてHansson氏を含め2名のアドバイザがおり、さまざまな部署とやりとりしながら、ICTへの取り組みを進めている。戦略的なICTを担当する審議会をシンクタンクとして利用し、長期的戦略を立てる。Vint Cerf氏(米Google チーフインターネットエバンジェリスト)など、オピニオンリーダーを招いた会合も定期的に開催している。このほか、プロジェクト単位でその分野の研究者にレポートを作成してもらい、資料やアイデアの源として利用することもある。「現在、2013年までの計画を立案中。スウェーデンをどのような国にするのか? そのような政府、社会を望むのか? そのために何が必要か? 短期的/長期的な計画を練る」とHansson氏はいう。

まずはインターネットの整備状況を見てみよう。

スウェーデンは、日本よりも広い45万平方キロメートルの国土を持つが、人口は日本の14分の1の約900万人。71%の家庭にブロードバンドがあり、欧州連合(EU)第3位。EUの平均値48%をはるかに上回るレベルだ。インターネットの普及率(100人あたりの利用者数)は76.9人、これも世界最高レベルだ。ブロードバンドを社会経済的な背景、高度サービスの利用、速度、価格、カバーエリアなどから総合的に評価するEUのブロードバンド指標BPI(Broadband Performance Index)では、オランダを押さえ欧州トップとなっている。ブロードバンドでは、DSLやケーブルに加え、光ファイバも急ピッチで進んでいる。

通信大手のEricssonのお膝元とあり、モバイルでもリードしている。携帯電話の普及率は100%を超えており、UMTS(3G)のカバーエリアも人口の99%となった。