――ところで、二人は制約があればあるほど逆に闘志を燃やすタイプではないですか?
ケッチ!「確かにちょっとそうかもしれません(笑)。まずパントマイムを選んだ時点で大きなハンデがありますけど、それが逆に考える方向をクリアにしてくれるという部分はありますよね。落語や短歌のように、足かせがあった方が想像力を大いにかき立ててくれますし、言葉で説明しすぎたら、受け取る人はその通りの想像しか出来ないじゃないですか」
HIRO-PON「たとえば何か果物を食べるマイムがあったとして、"何を食べているか"は、マイムを見たその人が感じたものでいいんです。リンゴであろうとカキであろうと、イチゴでも構わない。"おいしい"か"まずい"の加減も人それぞれでいい。同様に"恋"という感情を表現する場合でも感じ方は人それぞれで、100人いれば100通りの感じ方がある。それこそがパントマイムの真骨頂であり、素晴らしさなんです。重要なのは、僕らの演技を通じてお客さんが"心"を大きく動かしてもらうことなんです」
――では、パントマイムを通じて、人々に伝えたいメッセージは?
ケッチ!「普段はあまり口にしませんが、心の中ではいろいろと思っているんです(笑)。なにより"想像する楽しさ"ってすごいと思うし、それを焚き付けることが出来るパントマイムってすごいと思うんです。僕らだってまだまだ他の人のパントマイムを見て勉強することも多いし、そういう時って言葉にすると難しいんですけど、『あ、俺って(パントマイムっていう)いい仕事をさせてもらってるな』って実感するんです。そういう気持ちを、見ている人に対してもどんどん増やしていきたいし、実際にパントマイムをする人も増やしていきたいですね」
HIRO-PON「イメージすることで人間って成長すると思うんです。もちろん、パントマイムを"つまらないもの"だと思われないよう、もっともっと僕らも頑張っていかなければいけないですし、それが簡単じゃないことは充分わかっています。でも、難しいから面白いし、奥が深い。僕らがこうして10年続けていられるのも、面白さにキリがないからなんだと思います」
ケッチ!「"想像する"ことって、コミュニケーションにおいてすごく大切なことで、たとえば電車やバスでおばあさんが乗ってきてキョロキョロしていたら『あ、席に座りたいんだな』って思うわけじゃないですか。それでもし、自分が席に座っていたら席を譲ることが出来ますよね。想像することによって"気持ちいい関係"がそこに生まれる。そういう気持ちって大切だし、いつまでも無くならないでほしい。"思いやり"って"想像力"だと思うんですよ」
言葉を排し、身体の動きと表情だけでさまざまなモノや感情を表現するパントマイム。シンプルだがとても奥の深い表現と真摯に向かい合い、文字通り世界を舞台に活躍する「が~まるちょば」の二人。はたして彼らのパフォーマンスから何が創造されるのか、新しい年の始まりとともに期待して止まない。