アンチヒューズとフラッシュのFPGA
1985年に設立されたFPGAベンダのActelは、他のFPGAベンダが提供するSRAMベースとは異なり、アンチヒューズもしくはフラッシュ技術を用いたFPGAを提供することで、独自の地位を築いてきた。
2008年11月には、組み込みフラッシュ技術(eFlash)を用いた65nmプロセスのFPGAの開発に成功、2009年以降の製品化に向けた取り組みも進めている。
アクテルジャパンのセールスディレクターである片山雅美氏(2008年1月より同社の指揮を執っている) |
そんな同社の日本法人であるアクテルジャパンのセールスディレクターとして2008年1月より、同社の指揮を執る片山雅美氏に、Actel、そして自身にとっての2008年を振り返ると同時に、2009年以降の戦略について話を伺った。
同社の特長は先述もしたが、アンチヒューズもしくはフラッシュ技術を用いたFPGAであること。これらは、SRAMベースのFPGAと比べて、中性子線が引き起こすコンフィギュレーションの破壊に対する耐性が高いなどの特長を持ち、航空、宇宙関連で高いシェアを獲得してきた。また、フラッシュの書き換え可能という特長を武器に、コンシューマや通信分野でも確実に実績を積み上げてきている。
FPGAで携帯機器を狙う
――FPGAメーカーとしてのActelが狙っている市場とはどういった分野でしょうか
市場の方向性としては、より低消費電力かつチップサイズの小型化が求められていると考えており、その行き着く先としてコンシューマや携帯機器へのFPGAの適用を狙っています。
また、それと同時に、これまでの強みであるアンチヒューズ、フラッシュの特長を生かした航空・宇宙関連に対しても確固たる地位を確保していきたいと考えています。
――今、低消費電力とチップサイズの小型化でコンシューマや携帯機器を狙うと仰いましたが、FPGAのトレンドもそこにあると
半導体チップのデザイントレンドを考えた場合、1990年代はまずパフォーマンス第一、そしてコスト。これが2000年頃にはコスト優先となり、その次にパワー(消費電力)、そしてパフォーマンスとなりました。これはデバイスの性能の向上により性能は問題なくなり、それを活用するコストが問題となったためということが1つあります。そして現在は、携帯電話を中心とした携帯機器が増え続けており、そのバッテリの長寿命化のための低消費電力化、機器の小型化のためのチップサイズの小型化、そして安価な製品のための低コスト化が求められており、それはそうしたマーケットを狙うのであればFPGAでも例外ではないと思っています。
そのため、当社としても130nm eFlashプロセスを採用した第3世代フラッシュFPGAとして「ProASIC3」を2005年に発表して以降、より小型化、低消費電力化を図った「IGLOO」を2007年より量産、2008年には3mm×3mmのパッケージサイズを実現し、価格も50品種以上で1ドルを切ることを実現した「IGLOO nano」および「ProASIC3 nano」を発表するなど、より携帯機器に親和性の高い取り組みを進めてきています。
――nanoシリーズは、FPGAを携帯機器に本格的に取り込んでもらうことを意識したかなり意欲的な製品と見ましたが
はい。このほかにも性能と低消費電力の両立を図った「ProASIC3L」などもありますが、それらに比べても、小さくて安い特長のほか、ゼロリードタイムによるカスタマへ遅延なしで製品を届けることも可能なのが特長となっています。
また、同じゲート数で他社のFPGAと消費電力を比較した場合、スタティック電力はnanoシリーズで2μW程度、競合製品はその10~20倍程度となっており、ダイナミック電力もその比率はほぼ同じものとなっています。これは、SRAMベースのFPGAの方がトランジスタの数が多いため、必然的に消費電力が大きくなってしまうためです。