神を身近に感じる夜神楽
高千穂の名物の1つに夜神楽がある。高千穂に伝承される夜神楽は、天照大神(アマテラスオオミカミ)が天岩戸に隠れた際に、岩戸の前で踊りの名手である天鈿女命(アメノウズメノミコト)が舞ったのが始まりと伝えられ、神話の中の神々が次々と登場するのが特徴だ。毎年11月中旬~翌年2月上旬にかけては、地区の公民館や一般の民家など町内の19地区で、夕方から翌朝まで夜を徹して三十三番まである舞を神へ奉納する。夜神楽では、一般の民家が神楽宿として使われ、舞手と見物客とのやり取りが見物だ。この夜神楽のシーズン以外でも、高千穂神社の神楽殿では毎晩20時から1時間、三十三番ある神楽の中から代表的な舞が奉納され、その雰囲気をいつ訪れても楽しめる。今流行の"スピリチュアル"なパワーで恋愛運UPも期待できそうだ。
高千穂神社本殿の脇にある神楽殿。夜神楽の拝観料は1人500円で、365日神楽見物が楽しめる |
高千穂神社では毎晩「手力雄の舞」「鈿女の舞」「戸取りの舞」「御神体の舞」を奉納している。衣装も実際の夜神楽で使用されているものを使い、保存会のメンバーが交代で舞を担当。写真は「御神体の舞」 |
天孫降臨の地を訪ねて
前日のさまざまな体験を胸に、翌朝は「国見ケ丘」で気分一新、新たな1日をスタート。国見ケ丘は、その昔神武天皇の孫にあたる建磐竜命(タテイワツノミコト)が国見をしたことが名の由来だ。丘の上からは西に阿蘇、東に高千穂が見られる。阿蘇は緩やかな山々、高千穂は切り立った峰が並び、その特徴をひと目で掴むことができる。
続いて訪れたくしふるの峰周辺には、まさに古事記に記される天孫、瓊瓊杵尊の降臨神話にまつわる場所がいくつもある。まず、元々は降臨神話により峰全体を神体として祀っていた「くしふる神社」。くしふる神社から歩いて300mほど登ると、天孫降臨後に神々が天上の高天原を遥拝した場所と伝えられている「高天原遥拝所」。この2カ所は非常に神秘的な雰囲気に包まれており、この地に伝わる神話をそのまま体感できるような気分にしてくれる。そのほか、神代川のほとりにある天然の湧き水「天真名井」は、天孫降臨の際に天から水種を移した地と伝えられている。高千穂峡にある真名井の滝からはこの水が地下を通って流れ落ちているそうだ。吸い込まれそうに透明な水面を見ているだけで身も心も清められるようだ。
くしふる神社の拝殿と本殿。秋祭りの際にだけ開帳されるからか、普段はひとけがない。祭神に武甕槌命(タケミカヅチノミコト)がいることから、武神としても篤く信仰されている |
うっそうと木立が茂った中に突然出現する高天原遥拝所。非現実的なシチュエーションのせいか、自然と心が安らいでくる。私にとってはこの場所が高千穂で最も印象に残った |
(右)天真名井は樹齢1300年といわれるケヤキの根元から湧き出る天然水。くしふる神社や高千穂神社の例大祭の際には、この水で御輿を清めるそう(上)天孫降臨の地とされる「高千穂」という地名だが、実は宮崎県には2カ所ある。1つはここ高千穂で、もう1つは霧島の高千穂峰。この高千穂碑は高千穂が天孫降臨の地であると顕彰するために建てられたもの |
ややスピリチュアル色が強くなったが、最後は、天孫降臨時の案内役を務めた猿田彦命(サルタヒコノミコト)と天鈿女命が結婚したと伝えられる「荒立神社」。荒木を使い、急いで宮居を建てたことがその名の由来だそう。また、夫婦を神祭にしていることから、縁結びはもちろん、夫婦円満にご利益があるといわれている。残念ながら今回はお会いできなかったが、荒立神社の宮司さんに事前に連絡しておくとお話を伺ったり、悩み相談したりもできるとのこと。一見、何の特徴もない静かな神社だが、心地よい空気が流れているような感じを受けたのが不思議だった。
天鈿女命は舞踊の名手であったことから、芸事の達成や芸能で前に出られるようにと祈願に来る芸能人も多い。芸能の神としても有名なのに派手さはまったくない社殿。逆にその静けさがなぜか心地よい |
移動の途中に偶然見つけた「逢初(あいそめ)天神」。この天神付近には、瓊瓊杵尊が妃として迎える木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)をはじめて見初めた「逢初川」が流れている。このご縁にあやかって、私も早く誰かと…… |
高千穂は天孫降臨の地であることから、伝説・神話が日常生活に今でも息づく町というイメージが強く感じられた。数々の恋愛&スピリチュアルスポットを回り、女子力を向上する前準備として、身も心も清め真っ白な自分を取り戻せただろう。伝説や神話をベースにした恋愛&スピリチュアルスポットを訪れたい女性はぜひ一度足を運んでみてほしい。さて、恋愛スポットめぐり後編は、本格的に女子力をアップすべく南下し、日向と青島の恋愛スポットを目指す。
高千穂へのアクセス方法
■宮崎空港から
宮崎空港駅(JR九州特急にちりん・2640円、約1時間20分)→延岡駅(徒歩約2分)→延岡バスセンター(宮崎交通路線バス・1,710円、約1時間10分)→高千穂バスセンター ※待ち時間を合わせて所要時間は約3時間
■阿蘇くまもと空港から
阿蘇くまもと空港(宮崎交通/九州産交バス・2,100円、約2時間)→高千穂バスセンター ■高千穂内でのアクセス
観光に特化したバスなどはないので、車を使わない女性の一人旅ならタクシーを使ってまわるのがオススメ。その場合は、阿蘇くまもと空港バスの発着に準じて1日14便が用意される乗り合いタクシー「神話たかちほ号」を使うと経済的だ(2009年3月までの実証実験のため、その後の継続は未定)。発着場所は高千穂バスセンターで、今回紹介した(五ヶ瀬ワイナリーと逢初天神以外の)場所が停車地となり、1区間500円、何度でも乗り降りできる1日乗車券が2,000円とお得。各便の始発時間の1時間前までに、宮交タクシーまたは高千穂交通に電話にて要予約。