「次の世代の斬新な発想にも期待してます」
土佐信道(明和電機) |
フォルムも操作法も全てがナンセンス。そんな楽器を次々と自作し、ユニークな演奏パフォーマンスを見せるアーティストといえば明和電機。明和電機の代表取締役社長である土佐信道氏が、クリエイティブについて語り尽くした。
――そもそも、明和電機という存在は、どうカテゴライズされていると土佐さんはお考えですか?
明和電機 土佐信道(以下、土佐)「近年は、日本よりも海外でライブをやる機会が多いのですが、海外ではアーティストとして見られてますね。僕が作るものは楽器と、アートのナンセンスマシーンという機械なんですが、『ヘンな機械を使ってショーをするアーティスト』、『日本のヘンなカルチャー』、『ミュージシャンかアーティストかわからないけれど、なにかヘンだぞ』という感じで捉えられています」
――土佐さんご自身では、明和電機をどのように捉えていますか?
土佐「明和電機は活動を開始して今年で14年になるのですが、原点はあくまでも現代美術です。ただ、現代美術を当時、日本人あまり求めていなかった。その中でどうやって自分の表現を出していけばいいかを考えて、今の電機屋というスタイルにたどり着いたんです」
――自作楽器演奏のパフォーマンスで、メディアの注目を集めましたよね。
土佐「元々、シンセを使いバンド活動をしていたので、一度、そちらに流れましたね。活動していて感じたのは、『これは、芸術じゃなくて芸能だな』ということです。音楽を芸能として見せるのは、日本人には親しみ易い事ですからね」
――最近は新しい活動も始められたと聞いたのですが。
土佐「ええ、昨年からノックというプロジェクトをやってます。明和電機で培った技術を、子供に伝えるという感じですね」
――それは具体的には、どんな活動なのでしょうか?
土佐「明和電機の創造物は危険な物もあるので(笑)、安全なデバイスを作り子供に渡して遊んでもらい、ヘンな楽器を考えてもらう。そういう活動です。そのデバイスを起点に、、子供達が僕には考えもつかないような斬新な創造物を作ってくれるんじゃないかと、期待してるんですよ」
――子供の創造にも期待できますね。明和電機さんが活動を開始した時代よりも、現在のほうが技術の進歩によって、より自由な表現が可能になっているような気がします。
土佐「それは確かにありますね。僕らの世代での場合では、シンセサイザーがそれでした。機械で音楽が演奏できるというのは、本当に衝撃でしたよ。生の演奏とは違う、打ち込みで完全にリモートコントロールする音楽の面白さ。でも、明和電機はその逆の発想から生まれてるんです」
――どういうことでしょうか?
土佐「打ち込みのコンピュータが進化していき、シンセは情報の音楽になっていきました。初期のシンセはコンソールがガーっと目の前にある感じで、肉体的にも面白かったのですが、マウスをクリックするだけの世界になってきて『つまらないなあ』と感じたんです。その時期に、生の打楽器の持つ面白さと、コンピュータの持つ面白さの共通点に気がついたんです」
――生樂器とコンピュータの同期ですね。
土佐「このふたつの共通点は、スイッチを入れるか、入れないか、つまり叩くか、叩かないか。1か0かですね。それで打楽器とコンピュータを組み合わせた。これが面白くて、ずっと現在までやってる感じですね」