ATI Streamを採用したソフトウェアとしては、CyberLinkの「PowerDirector 7 Update」、ArcSoftの「TotalMedia Theater」が2009年第1四半期に登場する予定とされている。ArcSoftの製品紹介によれば、TotalMedia Theaterに含まれるSD→HDビデオアップスケーリングエンジン「SimHD」の開発に、ATI Stream Software Development Kit(SDK)が用いられているとのこと。「ATI Stream SDKは実装が容易であり、コア部分の実装は約1カ月程度で完了した」と説明されている。TotalMedia Theaterは、英語版が2009年1月のCESで発表され、日本語版は1月末にリリースを予定しているとのことだ。このほかにも、GPUによってアクセラレーション可能なアプリケーションとして、AdobeのAcrobatやPhotoshop、AfterEffectsやFlash、そしてMicrosoftのOffice PowerPointやVistaのPicture Viewer、Expression Encorderなども紹介されている。

ATI Streamを採用したソフトウェアCyberLinkの「PowerDirector 7 Update」

同じくArcSoftのプレーヤーソフト「TotalMedia Theater」

また、こうしたコンシューマ向けアプリケーションのほか、HPC向けのプログラムとして中国Tongji Universityの流体シミュレーションソフトがデモされた。ATI Streamはビデオ編集からHPC向けアプリケーションまで、FireProからRadeonまで幅広く利用できるとアピール。ATI Stream SDKでは、ハイレベルからローレベルまでの様々なインタフェースが搭載されており、C言語レベルからCAL(Compute Abstraction Layer)以下のレベルまで扱えるとのことだ。

Tongji Universityの流体シミュレーションソフト

ATI Stream SDKの構成を示したシート。Cライクな高級言語Brook+からCALを介し、GPUに演算命令を出す。また、提供されるツールでは、CAL以下の階層も直接扱うことも可能とのことだ

会場に展示されていた「Aprius Computational Acceleration System」。右の4Uフルサイズで8機のFireStream 9270を搭載し9.6TFLOPSの演算性能を持つ

4機のGPUを搭載したハーフサイズのAprius Computational Acceleration System

AMDでは、2009年のプランとしてATI Stream SDKとOpenCL、DirectXが連携することで、CPUとGPU双方を利用したヘテロジーニアスコンピューティングの実現を目指すと紹介している。OpenCLに関しては、クロスプラットフォームであり、中立的な標準化団体による仕様である点が強調された。クロスプラットフォームという点の紹介では「CPUでもGPUでも動く、さらに他のアクセラレーター、PGAでのCellでも動く」としているほか、あるプログラムを他のプラットフォームに移植する際においてもコードを書き直す作業が軽減されると、開発者側からもメリットがあるとした。また、標準化の点では、OpenCLを策定した団体「Khronos Group」を紹介した。OpenGLやOpenSLでも知られるKhronos GroupにはAMDも加入しているほか、IntelもNVIDIAも加入している。

2009年にはOpenCL対応により、CPUとGPUによるヘテロジーニアスコンピューティングが可能となる見込み

2009年第1四半期にATI Stream SDK 1.4が登場する。ATI Streamに最適化されたプログラミングツールを提供するとしているほか、その後もさらに多くのツールをOpenCLフレームワークに移行し、クロスプラットフォームを実現すると言う

米AMD グラフィックプロダクト・グループ シニアプロダクトマーケティング・マネージャーであるEd Buckingham氏。Khronos GroupにNVIDIAも加入している件に触れ、「プロプライエタリ(専用)であるということは、今後の道筋ではないということを彼らも気づいているからだ」と述べている