オーガニック・コットン採用への決断
patagonia日本支社副支社長の辻井隆行氏 |
最後のスピーカーは、patagonia日本支社副支社長の辻井隆行氏。同社は、環境問題に対する取り組みを昔から行ってきたアウトドア・ブランド。実際に環境問題に対する取り組みを、ビジネスと並行して続けてきた企業としての経験について話した。
patagoniaは、ロッククライミングが好きなイヴォン・シュイナード氏が、岩を登る時の道具を手づくりして販売したのが始まりの企業。そのうち、その道具によって、自然が破壊されていることを知った彼は、道具づくりをあっさりやめてしまう。その頃をきっかけに、地域で地道な活動をしている団体を支援したり、利益の1%を寄付する活動などを行ってきた。
その後、自分たちの製品の環境への影響について調べてみたら、コットンが意外にも負担をかけていることに気づいたという。綿には大量の農薬や枯れ葉剤を使っており、農薬をまいた後は、4日間畑に近づかないように近隣の住民に注意することもあるのだとか。そこで、同社は2つの選択肢に悩まされたという。
- オーガニック・コットンが流通するまで待つ
- 農家と一緒に共同して自分たちからはじめる
しかしイヴォン氏は「この事実を承知のうえで、今後も私たちが従来のコットンを使って作り続けたなら、どちらにせよ私たちは破滅する。オーガニックでいこう」と発言。オーガニック・コットンを積極的に使っていくことになった。そして、さらに話し合った結果、次のような方針で進めることになったという。
- 認定オーガニックだけでなく、トランジショナル・コットン(今後変化していこうとする)も使用する
- 染料は化学的なものを使っているが、それについては妥協する
こうして商品を開発し、販売したところ、顧客からは「高い品質に付加価値が加わってさらによくなった」「環境メッセージに強い共感を覚える」と評判だったそうだ。そこで「環境を重視する原則がビジネスに有効な場合がある」ということを実感できたという。
環境問題とビジネスについて考えるとき、つい「生産しないのが一番よいのではないか」と考える人も多いだろう。しかし、今の社会に関わっていないと、環境問題や今の社会システムの悪い部分は、いつまでも変わらないのではないか、と辻井氏は語る。だからこそ、企業というツールを使って「敵の陣地に入り」少しずつ変えていく必要がある、とした。