--睡眠障害は"加齢"も関係するのでしょうか?

岡本先生「確かに睡眠障害は年配の方が訴えることが多いのですが、精神的な原因もたくさんあります。ただ高齢になると筋の緊張が低下していびきを生じやすくなると言えます。さらに、アルコールも原因となって気道が狭くなり、いびきや睡眠障害を引き起こしやすくするということがありますね。肥満も大きな原因ですが、鼻炎などアレルギー疾患をお持ちの人も睡眠障害になりやすいことが明らかになっています」

--いびきは自分でわからなかったり、周りの人も"疲れているいびき"と"危険ないびき"の見分けがつかないと思うのですが、危険な症状だと気づく"サイン"はありますか?

岡本先生「確かになかなか『いびき』は自分ではわからないですよね。でも、寝ているわりに日中眠くて仕方がない、疲れがとれない、などの症状は1つのサインですね。また周りの人に寝ている間に呼吸がとまっていないか確認してもらったほうがいいです。独り暮らしの男性の方は社員旅行などで同僚に教わって初めて気づく方もいらっしゃいます」

--いびきから考えられる病気はありますか?

岡本先生「鼻がつまる原因として、鼻の感染、腫瘍、アレルギー疾患があります。扁桃の肥大、咽喉部の腫瘍など上部の気道の病気でも生じます。上気道の閉塞によって起こる疾病です。またいびきがひどくなると、『睡眠時無呼吸症候群』の可能性もあります」

--睡眠時無呼吸症候群について、検査の方法、予防策などはありますか?

岡本先生「睡眠時無呼吸症候群は、1晩(7時間の睡眠)に30回以上、10秒間以上の呼吸停止が起こることが主な定義とされています。30回以下の呼吸停止は睡眠時無呼吸症候群の予備軍と考えられます。脳梗塞後などの脳の病気による場合はまた別に考えます」

「睡眠時無呼吸症候群の検査の方法は一晩睡眠中の検査で、呼吸の状態や呼吸の通り道の圧を測定したり、脳波で脳が十分に寝ているかを測定します。今は自宅で無呼吸症候群を検査するものもあるのですが、あくまで簡易検査です。一晩病院に泊まって行う検査はなかなか大掛かりなものですが、確実に原因がつきとめられますね」

--いびきを防ぐ方法はありますか?

岡本先生「いびきだけなら、横を向いて気道を広げて寝る習慣をつける、鼻づまりを改善するという対策が挙げられます。ですが、予防策は原因を突き止めることが一番だと思います。どんな程度の狭窄なのか、どこで狭窄しているのか、口なのか鼻なのか、それにより解決策が異なるからです。睡眠時無呼吸症候群を心配する方で肥満気味の方はアルコールを控える、ダイエットをするなどは対策となりますよね。また病院で行う予防法、治療としては、舌が落ち込まないように器具(マウスピース)をつける、肥大した扁桃は一切切除する、あごが小さい人はひどい場合は手術をする、などがあります。ただ睡眠時無呼吸症候群は"病気"なので、しっかりとした治療が必要です」

鼻腔を広げて鼻の通りをスムーズにするブリーズライト(画像提供:グラクソ・スミスクライン)

「いびきを改善する市販グッズはどこまで汎用性があるかわかりませんが、鼻に原因がある場合は『ブリーズライト』などの製品を活用するのも一つの手だと思います」

--快適な睡眠のために簡単にできることがあったら教えてください。

岡本先生「ストレスをためない、寝る前に深酒をしない、適度な運動をするなども大切です。ですが、もし睡眠障害で悩んでいたら、その原因は様々です。一度、病院で診察を受けて原因を明確にして治療することが一番だと言えるでしょう」

--ありがとうございました。

プロフィール
岡本 美孝先生

医学博士
千葉大学医学部付属病 耳鼻咽喉科科長
1984年秋田大学大学院修了。1990年米国ニューヨーク州立大学バッファロー校留学。その後秋田大学医学部耳鼻咽喉科講師、山梨医科大学耳鼻咽喉科教授を経て、2002年より、千葉大学大学院医学研究院耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学教授に就任。日本鼻科学会理事、日本アレルギー学会監事などを務める。