最近寝つきが悪い、睡眠時間はたくさんとっているのに眠い、眠っていても日中眠気が襲ってくる、妻に「いびきがうるさい!」と迷惑がられる……このような経験はないだろうか? これらは睡眠障害と言われるものと少なからず関係しているという。今回は、いびきから起こしうる病気や睡眠障害への対策について、千葉大学医学部付属病院耳鼻咽喉科科長の岡本 美孝先生に話を伺った。
--一般的に、睡眠障害とはどんなものがありますか?
岡本先生「睡眠障害には色んなタイプがあります。まず布団に入って20~30分もなかなか眠れないというタイプ、目が覚めると眠れなくなる中途覚醒タイプ、眠りが浅く、睡眠時間は足りているのに十分寝た感じがしないタイプなどがあり、最近そういった症状を訴える患者さんが多くなっています。また、いびきがひどくなり、呼吸の通り道(気道)が狭くなりすぎて、いびきの後、呼吸が止まるようなら今注目されている『睡眠時無呼吸症候群』になって、心臓や身体のあちこちに負担がかかってしまいます」
--睡眠障害をもった人が「いびき」を起こしやすいのでしょうか?
岡本先生「睡眠障害をもった人が必ずしも『いびき』を訴えるというわけではありません。いびきは、狭い気道を空気が通る通過する際に鼓膜が振動して生じる異常な音です。いびきだけだと『騒音障害』で済み、本人ではなく周りの人に迷惑をかけることになりますよね。いびきがひどくなると睡眠障害を引き起こします。肥満の方は気道がせまくなりますが、肥満でなくてもあごが小さい人は舌が気道を狭くしやすいので、いびきを起こしやすくなります」
「寝ると誰でも筋肉が弛緩し、舌も落ち込みやすくなります。口の奥の軟口蓋も筋肉でできているので、弛緩すると気道が狭くなります。いびきとは、そうした状態になった上気道を空気が通過した結果、周囲の鼓膜を振動させて、音を起こして発生するものです。この状態がひどくなると、通常の呼吸では振動が強く、呼吸できなくなる『無呼吸』の状態を招きます。そうなると、血中の酸素の濃度もどんどん下がると同時に動血脈には炭酸ガスがたまります。この状態が続くと「死」に至らしめてしまうので、脳は『大きな呼吸をするように』という刺激を送ります。すると、止まっていた呼吸は再び大きな呼吸をはじめる……これが無呼吸のあとの大いびきの構造です。ですが、大きな呼吸で再開、となると炭酸ガスが減って脳の刺激もなくなり、普通の呼吸となると、再び呼吸ができなくなってしまうんですね。そこで、脳が再度刺激を促し、再呼吸……、というサイクルを繰り返す―。このことによって脳が寝ていない状態となり、翌日の昼間に眠気が強く、更に心臓にも大きな負担となって病気へとつながっていきます」