そして見逃せないのが、アジア市場である。現在、ビールの最大消費国は中国だ。全世界の20%近くをこの国だけで消費しており、その量は日本の約5倍に達する。消費量の伸びも約15%であり、縮小傾向の国内市場を補って余りある(※キリンビール「国別ビール消費量」を参照)。
「中国市場が生命線」。これは、日本のメーカーに限った話ではない。世界中の酒類メーカーにとって、21世紀の中国は社運を左右する重要なマーケットといえるのではないだろうか。キリンビールが「ギネス」のライセンス生産を開始したら、ディアジオとキリンビールは、アジア市場に於いて提携する可能性もあり得るだろう。
海外市場重視のキリンビール
キリンビールはグループ全体で、海外市場を重視する戦略をとっている。まず、キリングループは海外市場の売上の8割を占めるアジア・オセアニアを重点地域と位置づけると宣言している。そして、2015年にはグループ全体の海外売上比率を、現在の約27%から30%にするという目標を発表した。この積極姿勢は、「ギネス」におけるパートナーであるディアジオから見ると心強くうつるだろう。
酒類業界は群雄割拠の時代から、寡占化の時代へと移行している。今年11月にはインベヴ(ベルギー)がアンハイザー・ブッシュ(アメリカ)を買収し、アンハイザー・ブッシュ・インベヴという世界最大規模のビール会社が誕生した。そして5月には、アサヒビールとインベヴが提携関係の強化を発表したことも記憶に新しい。
世界的な再編の嵐は、中国という大きな市場を求心力にして、日本の上空にも雲を発生させている。
「エビス」(サッポロビール)と「ギネス」のハーフ&ハーフ(イメージ)。両社は気持ちをひとつにすることが出来なかった…… |
果たして2009年は、酒類業界にとってどのような年になるのであろうか。2009年はギネスビールが誕生して250周年にあたる。ギネスは創業間もなく、スタウトというビールのスタイル(分類)を生み出した。その頃のことを知る人、語る人はもういない。しかし、このスタイルのビールが飲み続けられているということが、「ギネス」という歴史の継続を意味している。2059年で300周年という尺度で考えた場合、来年の250周年という節目は、どのような転換点として語られるのだろうか。
まずは1パイントのギネスビールを飲みながら、これからの10年、20年に思いを馳せてみるのも一興である。