2009年は淘汰の波が押し寄せる
シャープは11月27日、同社の太陽電池事業に関する説明会を都内で開催した。
同社代表取締役 兼 副社長執行役員の濱野稔重氏 |
登壇した同社代表取締役 兼 副社長執行役員の濱野稔重氏は冒頭、世界のエネルギー需要動向の予測を示し、「太陽光発電の需要は伸びている。しかし、欧州ではスペインのフィード・イン・タリフ(FIT)が2009年には前年比で20%以上減額されるなど、欧州は減速気味となる」とした。
ただし、「各国政府が太陽電池の振興策を打ち出してきており、成長が続くことには代わりがない」(同)との見方を示した。
また、通常の電力よりも高い金額で電力を購入するFIT制度を背景に欧州や台湾、中国を中心に太陽電池製造企業が増加、すでに300社を超す状況となっているが、サブプライム問題に端を発した市場の調整局面により、資金調達の面で苦しくなるほか、ターンキーの導入などの場合、コスト削減のノウハウがないため、やがて苦境に陥り、2009年末にかけて淘汰の波が押し寄せるとの予測を披露した。
2010年には発電コストを23円/kWhに
太陽電池の発電コストは2007年で46円/kWhであったが、同社では2010年には、これを23円/kWhへと引き下げたいとしている。「今の日本の技術力なら十分できるはず」(同)であり、2030年には原子力発電に発電コスト7円/kWhと同等レベルまで引き下げることを目指すとする。
コスト削減のためには、原材料となるSiのコストダウンも必須だが、「現在の市場価格は長期契約で70~80ドル/kg、スポット価格になると300~400ドル/kgという場合もある」(同)であるが、太陽電池による発電コストが既存の発電コストと同等となる「グリッドパリティ」を国からの補助金なしで実現するためには、「40~45ドル/kgが最低ラインであるほか、結晶系では変換効率は20%を最低達成する必要がある」(同)という。
なお、現在の同社の太陽電池の変換効率は結晶系で14.4%、薄膜系で9.0%としており、「薄膜では変換効率を10%に、結晶系では同20%にすることで23円/kWhの実現を狙う」(同)とする。
すでに、薄膜系では微結晶Siセル/a-Si/a-Siのトリプル型を堺工場に導入することを決定、この変換効率は最大で13%程度を見込んでいる。また、結晶系でもすでに変換効率20%を実現する技術にめどをつけており、現在は量産化に向けた技術の評価中であり、2009年には実際にラインで流し、2010年には本格量産を狙うという。
同社は薄膜系と結晶系の2つの太陽電池の供給を行っているが、「(屋根などの)限られたスペースには(発電効率が高い)結晶系を、土地が安く、日照時間が長く、日射量が多い(南欧や赤道付近などの)地域には薄膜系を提供する」(同)といったように、地域によって使い分けていく。
また、「(太陽電池の測定基準は25℃だが)変換効率は1℃温度が上昇すると、結晶系で30%、薄膜系で10%低下する。暑い地域には薄膜系が向いている」(同)とする技術的な背景も存在している。
北米地域に関しては、材料調達の安定供給の意味合いも含め、米国のpoly-Siメーカーとの協業を決定。現地でのpoly-Siからウェハまでの一貫生産体制を構築するとともに、消費地でのセル~モジュールの一貫生産体制も確立することで、流通コストの削減などを目指す。