AMD(ATI)は11月13日、これまで同社のRadeonコアベースのHPC(High Performance Computing)ボード向けのGPGPUプラットフォーム「ATI Stream」を、GPUのATI Radeon HD 4000シリーズでも利用可能にする計画を発表した

Catalystのバージョン8.12により、ATI Radeon HD 4000シリーズが「ATI Stream」に対応

Radeon HD 4000シリーズにてネイティブGPGPUモードが利用可能に

AMDは、12月10日頃にリリースを予定しているRadeon用ドライバソフトウェア「Catalyst 8.12」にて、Radeon HD 4000シリーズをGPGPUプラットフォーム「ATI Stream」に対応させる。

Catalyst 8.12インストール後のRadeon HD 4000シリーズ搭載環境では、「ATI Stream」ベースのアプリケーションがGPUグレードに応じたスピードでアクセラレーションされることになる。具体的には、今度のCatalyst 8.12で、もともとRadeon HDシリーズが持っていたGPGPUのポテンシャル(≒ストリーミングプロセッサの動作モード)を有効化することに相当する。Radeonモードでは無効化されていた倍精度64ビット浮動小数点(FP64)演算モードももちろん有効化される。

ATI Steamは、もともとは、Radeonコアをベースにした「FireStream」ブランド向けに展開されていたGPUベースのHPC(High Performance Coputing)ボード製品のためのGPGPUプラットフォームであった。

2007年11月にはRadeon HD 3800(RV670)コアベースの「FireStream 9170」を発表し、GPUベースのHPCとしては業界初のFP64に対応したことが大きく取り沙汰され、また、2008年6月にはRadeon HD 4800(RV770)コアベースの「FireStream 9250」を発表したことが記憶に新しい。

FireStream製品は同世代Radeon製品と同一コアであるものの、コンシューマ向けGPUとしては無効化されていたFP64演算機能が有効化されているのが最大の特徴であった。そして、これがAMDのGPGPU戦略として、学術用、業務用の製品としてプレミアム感を与えることに繋がっていた。しかし、その反作用というべきか、GPGPUプラットフォームとしてのATI Streamは、一般ユーザーからは縁遠い存在となってしまっていたのも事実であった。

GPGPU向けプラットフォームといえば、現状は、GeForceブランドのコンシューマ向けGPUと、学術用、業務用のGPUベースのHPCソリューション「Tesla」の双方で透過的に利用できるNVIDIAの「CUDA」(Compute unified device architecture)の方が一般ユーザーには認知度が高い。

これはNVIDIAがAMDよりも早い2006年から、CUDAを発表してGPGPUを訴求し続けていることと、一般ユーザーに近いCUDAベースのアプリケーションを比較的多く出す事に成功していることが影響している。

最近では、国産動画エンコードソフトとしては非常に人気の高い「TMPGEnc」がCUDAに対応したこと、そして今秋からの新ドライバからは物理シミュレーションエンジンの「PhysX」までもをCUDAベースでアクセラレーション出来る仕組みを実装したことが、ニュースとして大きく取り上げられた。

今回のAMDのATI Streamにまつわる発表は、この躍進しつつあるCUDAに対するカウンターパンチの意味合いが強い。

今回の発表と同時に、GPGPU専用HPCカード「FireStream 9270」も発表されている。こちらはFireStream 9250の上位モデルに位置付けられ製品で、9250と同じ、Radeon HD 4800シリーズ(RV770)コアを搭載した製品になる。GDDR5メモリを採用している点が9250との最大の相違点