宮本武蔵は箸で蠅を捕まえたと言われる。我々凡人には到底真似のできないことだ。しかし、EX-FH20を使えば、肉眼で見切ることはできなくても、後からそのシーンを克明に再生することはできる。また、横から見ていてもなかなか予測がつかない矢が放たれる瞬間も、時間を遡って記録するパスト連写機能によって、確実に瞬間を捉えることができる。 そんなEX-FH20が活躍するのは試合会場での撮影だけではない。実は練習のときにEX-FH20を使用すると、他のカメラでは決して得ることのできないとても有効な映像を撮影することができる。すでに、科学的な強化の一環として、上位機種の「EX-F1」やEX-FH20での撮影を取り入れている弓道会もある。

ハイスピードムービーだけの特権

まばたきする程度の時間で弦から離れ的に向かって飛ぶ矢。そのときの射手の手はどうなっているのか。よほど目の良い人でなければそのときの手の動きを見ることはできないし、見たとしても伝えきることはできない。ハイスピードムービーならば、説明不要、動画がすべてを語ってくる。

例えば、弓を持つ左手が離れのあと、どのように動いているのか気になったとしよう。誰かに頼んで見てもらっていても、高速で横切る矢越しに手を見られる人がどのくらいいるだろうか。

動画
弓を掴んでいる左手を離れの瞬間から600fpsのハイスピードムービーで撮影した。約30秒の動画なので実時間では約1.5秒のできごとになる。この動画を検討すれば、左手には特に問題はないことが自信を持って確認できる ※EX-F1で撮影

その場で動作を確認できるハイビジョンムービー

弓道の動作が流れならば、自分でその流れを確認したくなる。EX-FH20に搭載された大型の3.0型液晶モニターならば、その場で撮影したビデオを確認することができるし、道場にテレビがあれば、つないで大画面で確認することもできる。デジタルビデオカメラなどで撮影した場合には頭出しの時間もかかるが、EX-FH20ならば簡単に再生できるし、ノートパソコンを持ち込んでいれば、マウスなどで細かく特定のシーンを繰り返し再生することもできる。

すべての動きを記録する超高速連写

超高速連写を利用すれば、人間の目では到底捉えきることのできない映像をEX-FH20は明らかにしてくれる。場合によってはムービーよりも写真のほうが雄弁だ。下の写真は射手の矢を放した右手の動きを細かく見るために、超高速連写で撮影した40コマから動きの間隔を見ながら選んだ5枚の写真をPhotoshopで合成したものだ。

撮影した5枚の写真をPhotoshopで合成した。EX-FH20には、撮影した画像から動いている被写体だけを切り抜いて1枚の写真に写し込む「マルチモーション」機能も搭載される

矢を放した反動で後ろにかえる右手が一度開き、最終的に閉じている様子が判る。これはかなりの高段者でもやってしまうミスだが、本人もまったく意識していないことで、横にいて見極めることは相当の指導者でなければ難しい。ここまでの連写間隔で撮影できるのはEX-FH20のようなハイスピードデジタルカメラだけで、さらにパスト連写機能(シャッターボタンを押した瞬間に、時間を遡って連写を保存する)がなければ、矢が放たれた瞬間の前後の写真を撮ることはできない。このような本当にまばたき一回よりも短い瞬間を確実に切り取れるところがEX-FH20の最大の魅力だろう。

なお今回は「ハイスピード」機能に注目したが、EX-FH20には上の写真のような画を自動で合成してくれる「マルチモーション」機能がある。この機能ならば、Photoshopなどで複雑な合成処理を行わなくても、簡単に同様の写真を撮ることが可能となり、競技のフォームチェックなどにも活用できる。