カシオ「EX-FH20」のような超高速連写が可能なカメラということになると、どうしてもバスケットボールやテニスのような動きの激しいスポーツが被写体として思い浮かべられるが、逆に静の競技である日本古来の武道の一つ、弓道を撮影してみよう。
弓道の場合、もちろん矢が的に当たる当たらないということも重要な要素ではあるが、それは一つの側面。正しい姿勢で正しく射、気力を充実し満を持して矢が放たれる。矢は正しく狙った的にまっすぐに飛ぶ。そのための心身の鍛錬が弓道の神髄である。
日本の弓にはアーチェリーのような照準器やスタビライザーはついていない。クロスボウのように力まかせに矢を打ち込むものでもない。腕力ではなく自然な体の動きで弓を押し開き、矢をつがえ、射る。とても美しい動作であり、緊張感のある被写体だ。的に正対する射手をファインダー越しに見るとき、写真を撮る側も自然と息を合わせ、射手と同じ集中の時間を共有するだろう。
まずは弓道の基本を簡単に説明
競技としての弓道は近的(きんてき)として28メートルの距離から一尺二寸(36cm)の的を射るものと、遠的(えんてき)として60メートルの距離から通常100cmの的を射るものが多く行われている。京都の三十三間堂でお正月に行われる通し矢もこの遠的競技だ。競技人口は十万人を超え、高校で弓道部員を身近に見ていた人も多いだろう。
古くからの武道だけに色々な流派はあるが、全日本弓道連盟では「射法八節」として射の基本動作を8つに分けている。
射法八節
一、足踏み(あしぶみ) |
二、胴造り(どうづくり) |
三、弓構え(ゆがまえ) |
四、打起し(うちおこし) |
五、引分け(ひきわけ) |
六、会(かい) |
七、離れ(はなれ) |
八、残心(残身)(ざんしん) |
もちろん、これらの動作はあくまで「節」であって、連続した1つの流れのなかのそれぞれのポイントである。いわば一本の竹のなかに節があるように全体として一射がある。したがって、写真を撮るとき、この八節を意識していれば、射手は矢で的を狙い、片やフォトグラファーはレンズで被写体を狙う、共通の時間を過ごすこととなる。 ……続きを読む