── 歳をとっても車やバイクをスピードを出して運転する人が増えています。

若倉「やっぱり休息を取ることが大切なことだと思います。持続的にずっと運転していると、測定はできませんが、目の機能は落ちているでしょう、歳をとったら若いときと同じだと思わないで、やっぱり安全を考えて適切に休息を取ることです」

「たとえば、PCの作業だって厚生労働省が1時間やったら10分休みなさいと勧告を出しているんですね。もちろんそれは健常な目の人のためです。目に病気があったり、年齢がいっていたりする人だったら、もっと休まなくてはいけないわけです」

──目の健康で、ふだん気をつけたほうがいいことは?

若倉「紫外線は目の網膜にとって有害です。とくに目に病気がある人にとっては、進行を促す可能性があるものです。最近オゾン層の破壊により紫外線が強いから、若いときから気を付けていれば、加齢による病気の発症が減る可能性もあるでしょう。あくまで仮説ですが、理論的にリスクの可能性があるものは避けたほうがいいと思います」

「あと、タバコもお酒もリスクファクターとしては低いものの、危険だと言われていますね。他の病気でもリスクファクターとされており、とくにタバコがリスキーです。お酒は適量なら問題はありません」

── 栄養面ではいかがでしょう?

若倉「目は神経系なのでビタミンB群が大切だと思います。それから視細胞に大切なのはビタミンA、緑黄野菜とかDHAにあたるもの、青魚なども目にはいいもののひとつです。あとは色素のある果物や野菜が、紫外線除けのファクターを持っていますよ」

── ストレスも目に関係ありますか?

若倉「ストレスが誘因になって起こる目の不定愁訴が増えています。直接わかっている病気に結びつくとは限りませんが、目は優れた感覚器なので、そこに異常感を持つことは多くて、今まで医学で気が付かなかったことのひとつと言えます」

「眼科のお医者さんは白内障、緑内障はわかるが、不定愁訴は軽視してきました。目に異常がないなら、と心療内科、精神科へ行くと、目のことは眼科に行って相談してくださいと言われてしまう。うつ病や心の不調が症状として目に出るとは、眼科医も精神科医も今まで思っていなかったんですね」

「私は神経眼科が専門で、そういう患者さんがたくさん来ますよ。やはり目は敏感なので、心の問題やストレスが目に現れやすいですね」

──となると、 目の疲れは、単なる目だけの疲れではない?

若倉「私の考えでは、『目に関するもの』と『視覚環境』、『心の環境』、この3つが合わさり、それぞれの不調がある程度のボリュームになると、個人の許容範囲を突破して、病的な眼精疲労の状態になってしまう。単なる眼疲労は一晩寝れば治ります。それとは違います」

「目自体の疲労は少なくても、最近は視覚環境がひどいですね。一日12時間もパソコンを見ていれば、生物としての人間の適用範囲を突破します。まだ楽しいことなら我慢するかもしれないが、仕事などを嫌なことだと思いながらやっていたらすぐ突破してしまう。ストレスはまさに心の問題ですから。目とストレスは、今まで医者が気づいていなかったが、非常に大きな問題だと思っています。だから、単に『視力』ではなく、私は『目力(めぢから)』が大切だというんですよ」