このような撮影で、ポイントとなるのは、静止状態の「普通の写真としての完成度」と、臨場感を意識して、いかに瞬間を切り取って被写体の動きを静止画である写真に落とし込むかということの2つだ。

動きを静止画に落とすというのは、具体的には、大砲を発射して火があがっている瞬間や、飛んでいくミサイルを写しこむことだ。前述したように、砲弾やミサイルなどは非常に速く、また、発射の瞬間というのは一瞬のできごとなので、一眼レフでもファインダーをのぞいて、その瞬間にシャッターを押すのは非常に難しい。プロでもたいていの場合は、高速連写モードでカメラに任せることになる。しかし、アマチュア用機材では高速連写能力やバッファに制約があるため、なかなか「その瞬間」を撮影できない。そんなとき効果を発揮するのが、EX-F1の連写能力とパスト連写機能だ。

90式戦車の120mm滑腔砲は、薬莢を砲身内で燃焼させるので発射の瞬間、一瞬だけ巨大な火柱が出現する。この爆炎をタイミングよく撮影するには、見込みでシャッターを切って偶然のチャンスに賭けるか、EX-F1の高速連写で時間を切り取るかのどちらかの方法を選ぶことになる

EX-F1は連続60枚の連写が可能で、かつ1秒間に最大60枚の超高速連写撮影ができる。しかもパスト連写と呼ばれるシャッターボタンを押した時点の前後の画像を記録できる機能がある。他社のデジタル一眼レフカメラでもエントリー機(EOS KISS X2)では連写性能は3.5枚/秒、中級機(EOS 50D)で6.3枚/秒、プロ向け(EOS-1D Mark III)で10枚/秒なのでEX-F1の連写性能がどんなに突出しているかがわかる。EX-F1では、EOS 50Dと比較してジャストタイミングに写真撮影可能な確率が単純計算でも約10倍あるのだ。

EX-F1の高速連写で1秒間に60コマの撮影をした。爆炎はわずかな時間しか出ておらず、通常の連写では写すことができないが、60枚/秒の高速撮影なら炎を10コマに亘って捉えている。この中からベストの写真を選択すればよい

また、高性能な一眼レフを使用していても、大砲の発射シーンを待っていて「あっ、発射した」と思ってからシャッターボタンを押したのでは、そのときには撮るべき決定的瞬間は終わっている。これを防ぐためには、いつ発射されるとも判らないタイミングに向けて事前に連写を開始しないとならない。カメラ内のバッファは多くても数秒分しかないため、早めに連写を始めてしまうと、必要なタイミングの前にバッファが尽きてメディアに書き込みが始まってしまい、もうそれ以上撮影できず、決定的な瞬間を撮り逃すことになる。

89式装甲戦闘車から対戦車誘導弾が発射された瞬間を捉えた。いつ発射されるともわからないシャッターチャンスを捉えるにはパスト連写機能が有効

一方、EX-F1のパスト連写機能では、シャッターを半押ししている間は直近の60コマを常にカメラ内のバッファに記録し続けるので、シャッターを押すタイミングが遅れても大砲の発射シーンを撮影できる。この60コマは撮影設定で60枚/秒ならば1秒間分、15枚/秒ならば4秒分に相当する。パスト連写を設定しシャッターボタンを半押しのまま大砲の発射などの瞬間を待ち、「おっ」と思った瞬間にシャッターを押し込むだけで、その前後の画像を確実に撮影することが可能になるのだ。人間の反応速度には限界があるので、目で確認してシャッターを押すまでに若干のタイムラグはあるが、パスト連写の設定ではその時間まで考慮した上で「シャッターボタンを押す前0.7秒、後0.3秒」のように実際に写真として残す画像を指定できるので、誰でも決定的瞬間の撮影が可能だ。……続きを読む

軽装甲機動車から手持ちで01式軽対戦車誘導弾を発射した瞬間。対戦車誘導弾は初速がそれほど速くないため肉眼で飛行を見ることはできるが、これを写真に撮ろうとすると、普通ではとても追いつけない

動画
発射の瞬間を組写真にしてみるとより迫力がある。高速連写で撮影した12枚を1コマ0.4秒でムービーにしてみた。これは動画撮影したものではなく、写真からムービーに合成したもの。いかに高速度の短い間隔で連写されているかが判る
同様に発射前後のコマを動画化した。最初からムービー撮影したものと異なり、コマ送りのようになるが、逆に動きを目立たせるという意味では、これはこれで使用できる