Windows 7ではメモリー消費量を削減
Sinofsky氏は「Windows 7がもたらすパーソナライズド・エクスペリエンス」「ネットワーク、他のデバイスやストレージをカバーしたPCでの情報アクセス・管理」「デバイスとの連携」などをテーマに、前回のレポートのような機能デモを披露した。
Windows/ Windows Live Engineering Group担当のシニアバイスプレジデントSteven Sinofsky氏 |
Windows 7における"Software + Services"は「Windows Live Essentials」と「Windows Live Services」との組み合わせ |
Windows 7 PCにおいて、Ozzie氏が述べたようなWebや携帯電話との組み合わせの価値を生み出すのは"Software + Services"になる。具体的には「Windows Live Essentials」と「Windows Live Services」だ。現在ベータ2段階であるLive Essetialsは、Windows PCの機能をWebサービスに拡大するリッチアプリケーション群である。これまでにも一部がWindowsに含まれていたが、" + Services"の部分をより明確にユーザーに伝えるために、すべてをソフトウエア・スイーツにまとめた。Live Servicesは、Webブラウザから利用できるLive.comサービスだ。これら3つ (PCプラットフォーム、リッチ・アプリケーション、Live.comサービス) が揃った時に「PCエクスペリエンスをWebに広げる、Software + Servicesエクスペリエンスになる」という。ただ現状では、まだWindows 7で実現する"Software + Services"には踏み込めないようだ。この日は簡単な説明のみで、具体的なデモには至らなかった
PDC2008会場でのWindows 7のキャッチフレーズは「A Solid Foundation for New Possibilities (新たな可能性をもたらす強固な基盤)」である。これはPDC参加者である開発者やIT専門家、ビジネスパートナーに向けた言葉だ。Sinofsky氏のプレゼンテーションの後半は、このメッセージの意味の説明となった。
Windows VistaのRTM以来、非常に多くのフィードバックやコメントが開発者やユーザー、メディア関係者などから寄せられたという。デバイスの相互運用性の問題、スピード、使い勝手などに対する不満の声には、Service Pack 1(SP1)の提供を通じて対応したものの、そのいくつかはAppleのCMで突っ込まれ、さらに「SP1こそVistaの始まり」というような辛辣な意見も見られた。
「Windows Vistaの開発を通じて、われわれはいくつかの大事な教訓を得た」とSinofsky氏。「最初に、これらの教訓がWindows 7構築に反映されていることを伝えたい」と会場の開発者やパートナーに訴えた。まず「エコシステム」。Windows 7はVista/ Windows Server 2008のカーネルを採用している。そのため劇的な変化は望めないものの、これまでにVistaで築かれた相互運用性が、そのまま次世代へと引き継がれる。開発者やパートナー、そしてユーザーにとって安心につながる保証だ。Vistaで導入されたUACはセキュリティを強化した反面、一部のソフトウエアの利用を妨げるなどのトラブルにつながった。しかし1年が経過した今日では、大多数のソフトウエアが標準ユーザーモードで動作するようになり、セキュリティとの両立が実現しつつある。このような「互換性」もまた、Windows 7に引き継がれる。次に「標準サポート」。ユーザーと開発者から数多く寄せられた要望だった。これはInternet Explorer 8のもっとも大きな開発目標になっている。またワードパッドがOpen XML形式とODS形式をサポートする。最後に「シナリオ」だ。これは前回のレポートにあるような、シームレスなホームネットワーク利用やコンテンツアクセスなど、エンドツーエンドの利用体験の実現を指す。
Vista開発の教訓とその対応を示した上で、次にWindows 7が開発者やパートナーにもたらす新たな可能性に話題を移した。まず「Ribbon」。データ主導のユーザーインターフェイスによって、シンプルかつ効果的な情報アクセスを可能になる。Microsoftはワードパッドやペイント、Movie Makerに同インターフェイスを採用し、さらに幅広いアプリケーションへと拡大しようとしている。次に機能デモで紹介した「Jump List」と「Libraries」。パーソナリゼーション、ユーザー自身によるコントロールという点で、大きなアドバンテージになるとSinofsky氏。さらに「マルチタッチ」、「インク」、「Direct X API」を挙げた。Windows 7においてDirect Xが2D、アニメーション、テキスト表示などに積極的に活用される。
最後に基本性能に関する設計計画に触れた。基本性能の向上にはより小さく、またはより速くという考え方があるが、まず"マイナス"側ではグラフィックスやリファレンス・セットの工夫によるメモリー消費量の削減、レジストリの読み込みやインデックス作成におけるディスクI/Oの削減、DVD再生の改善やタイマーによる省電力化などが挙げられた。逆に"プラス"側では、起動時間の短縮やDevice Readyによるスピード増、スタートメニューやタスクバーなどの反応速度向上、対応プロセッサ数拡大 (256個) などを実現する見通しだという。
以下の写真は、開発者向けとして披露されたデモ。
Windows 7の開発ステージはM1、M2、M3、ベータという4段階を経てRTMに至る。PDC2008で配布されたプリベータ版はM3ビルドに相当する。これは導入基準となる基本的な機能目標や性能目標をクリアしている。2009年前半のリリースが見込まれるベータ版はフル機能版となる。