生活になじむデザイン

三洋電機のブランドビジョンは「Think GAIA」。2005年に打ち立てられたこのビジョンでは、「未来の子供たちへ美しい地球を還そう」を企業としての使命と考え、「サステナビリティー(共生進化)」をキーワードに、「地球に喜ばれる会社」を目指している。

IIDデザインラボでは、このブランドビジョンをベースとしながら、「TIMELESS」、「AGELESS」、「UNISEX」をキーワードとしてデザインを展開。ターゲットを設定して開発することが多い家電において、あえて時代や性別でターゲットを区切らず、きちんと良いデザインをすることを目指しているのだという。ただ、つくりだす製品は「万人向け」ではなく、「自分の目で判断してものを買う人向け」という信条だ。

新幹線での移動中に簡単なスケッチをメモしておく。この時点で、頭の中にはほぼ最終形に近いデザインがディテールまで含めてビルトアップ出来るという

また、「SIMPLE(簡素)」「MODERATE(中庸)」「UNFINISHED(加減)」というデザインランゲージを設定。欧米とは違う日本ならではのシンプルさ、とんがっていない普通に好いもの、ガチガチに完成させずに使う人が接する余地を残したものづくりを心がけているという。

使うほどに味が出る木や金属を使用し、プラスチック部分を極力少なくしたPURE AUDIO「HEART MUSIC」(プロトタイプ)。真鍮部分(左)も年月を経て味わい深いものになっている

365日臨戦態勢

「coolがかっこいいと思われてきたけれど、warmのほうがかっこいいんじゃないか」。それが田中氏が出した答え。「とんがっていない、生活になじむものをつくりたいのです」。展示されている製品を見渡すと、カラーにも独特な特徴がある。モノトーン以外にも赤、青、黄色などのカラーモデルも提案されているが、どれもビビッドな色調ではなく、落ち着いたテイストのものが多い。

エアーフレッシャー「CAF-VW10TG」。マシュマロホワイト、チョコレートブラックの2色

エアーフレッシャー(プロトタイプ)。現状の2色に追加して多彩なカラー展開も計画中

カラー版の充電池「eneloop」(プロトタイプ)。1,000回使えるのであれば気に入ったカラーが選べたほうがいいのでは、という提案。充電器は、充電池のカラーが映えるプレーンなものに

「部屋づくりをするときにいちばんノイズになってくるのは家電ですよね。お店で見ていいと思っても、実際に買って家に置くとしっくりこなかったり。生活に本当はどんなデザインが必要なのかを考えたいのです」。だからこそ、量販店でいかに目立つかという"売るためのデザイン"ではなく、生活の場に持ち込んだときになじむ"シンプルなデザイン"を重視しているのだという。今後の予定としては、まずアシスト自転車のデザインを手がけるとのこと。「新しい仕掛けで今までとはかなり違うものができます」という新製品が今から楽しみである。

冷蔵庫(プロトタイプ)。表面パネルやハンドルなど、デザインにカスタム性をもたせている

"簡素美"をテーマとしたオーブンレンジ「EMO-1000S」(左)とオーブントースター「SK-WQ3」

オーブントースターのカラー展開(プロトタイプ)

カップ型充電器付き子機がセットになった「FAX&ホームテレフォンシステム」(プロトタイプ)。機能を省きシンプルにした

「365日臨戦態勢。絶対にいいものができるまでたたかっていきたい」と語る田中さん率いるIIDデザインラボの製品。展覧会は3日まで。独特の温かい色合い、優しいフォルムをもつ製品に会いに行ってみてはいかがだろうか。開館時間などの詳細はこちら