同社のタブレットの開発コンセプトは、「高精度で快適なペン入力環境に、タッチパネル機能を追加し、室内屋外での視認性を高くすることで、最高水準の入力環境を提供すること」とされる。
この視認性の向上のための技術として、同社研究・開発 ノートブック研究開発 サブシステム技術 表示技術の土橋守幸氏が、最新のThinkPad Tabletが採用する低反射タッチパネルついての解説を行った。
デジタイザーのほかにタッチパネルを備えるマルチタッチモデルのThinkPad Tabletでは、円偏光低反射タッチパネルと呼ばれる特別なタッチパネルを搭載している。デジタイザーモデルとあわせて、光学処理の最適化や高輝度LCDを採用することで屋外視認性を高める工夫はされているのだが、タッチパネルではその分のガラスとフィルムの層が追加されているため、従来のパネルのままでは光の反射が大きい。そこで、円偏光の技術を利用し低反射を実現した同タッチパネルが採用されているのだそうだ。
この円偏光低反射タッチパネルは、従来のタッチパネルでは20%程とされる反射を、同1.6%程まで抑えることを実現にしているとされる。まずパネルの構成だが、タッチパネル部分の表面を上と見て、偏光板、λ/4板(1)、ガラスを含む反射層、λ/4板(2)が上から順に重なり、その下にLCDという配置になっている。
反射遮断のおおまかな仕組みは、タッチパネル表面からの入射光が、偏光板(0°)で直線偏光(0°)に変換され、λ/4板(1)を通る際に時計回りに円偏光される。ガラスを含む反射層の部分で反射された光は、反時計回りの円偏光になる。反時計回りの円偏光がまたλ/4板(1)を通過すると、直線偏光(90°)に変換される。そして直線偏光(90°)は偏光板(0°)を通過できないため、反射光が抑えられるというわけだ。
一方の、遮断してはいけないLCDからの光を透過させる仕組みは、直線偏光(0°)されたLCD光が、λ/4板(2)で時計回りに円偏光され、そのままガラスを含む反射層を通り、λ/4板(1)を通る際に直線偏光(180°)に変換される。この直線偏光(180°)は偏光板(0°)を通過できるため、LCD光は遮断されず透過することができる。結果、明るい環境でも反射を抑えコントラストを維持することが可能となり、屋外でも視認性に優れたタッチパネル・タブレットを可能にしているのだという。
引き続き、同社研究・開発 TVTノートブック ソフトウェア開発 第一TVT開発の森英俊氏からは、タブレットの「快適な入力環境を実現」するための、ソフトウェア面からのアプローチについての解説があった。
ThinkPadのソフトウェア機能と言えばThinkVantageがまず挙げられるが、最新のThinkPad Tabletでは、キーボードを利用しないタブレットならではのソフトウェア機能が豊富に盛り込まれている。まずは本体をタブレットモードにした状態において、作業効率を向上させる「タブレット・ショートカット・メニュー」の機能が紹介された。本体のショートカットボタンからワンタッチ起動できるよう工夫されているなど、タブレット用ThinkVantageといった趣きの機能だ。
その内容だが、液晶の向きに応じて自動で画面の向きを変えるアクティブ・ローテーションや、マイクの指向性を切り替え、ノートブック状態とタブレット状態では異なってくる最適な収音範囲を自動調整するビフォーミングのオン/オフ、画面の輝度調整やスタンバイモードの設定など、タブレット状態で利用価値の高い項目の設定はここで一括して行えるようになっている。ちなみに、メニューから通常のThinkVantageに直接アクセスすることも可能だ。
マルチタッチモデル向けでは、"お手つき防止機能"も重要な機能として紹介された。タブレットモードでペンを使って入力している場合、どうしても画面上に手を付いて入力したくなるが、そうするとペンと手の両方で反応してしまい、入力を二重に受け付けてしまう。しかし、画面に手を付かないようにペンを使うというのは、これが意外と違和感があるのだ。
お手つき防止機能では、タッチパネルとデジタイザーのそれぞれの入力データを制御するモジュールを搭載することで、これを解決している。画面上に手を付いてペン入力を行っても誤動作を起こさないので、入力インタフェースとして、より違和感無く自然に"ペン"を使うことができるようになるのだ。
ほかにも、タブレットモード時、キーボードのトラックポイントがLCDに衝突し、意図しないデータが入力されるのを防ぐため、トラックポイントをオフにする仕組みや、消しゴム付き鉛筆のようなイメージの、ペン後部に搭載した消しゴム機能など、ThinkPad X200 Tabletをはじめ、現在ラインナップされているThinkPad Tabletには様々な機能がきめ細やかに搭載されていることが紹介されている。こういった現実に即した工夫は、長くタブレットに取り組んできた同社ならではだろう。