「満場一致で決定しました。これはもう超芸術、すばらしいです。グランプリは『トルパン』!」
ジョン・ヴォイトの言葉に、この日一番の歓声と拍手が起きる。セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ監督が最優秀監督賞を受賞したのに続き、まさかの二冠達成に信じられないといった様子の監督と出演者たち。もう出番はないと思っていたのか、「(主演の)アスハットなど、すでにネクタイを外してしまいました」という監督の言葉に会場から笑いが。「じつは、『トルパン』は私にとって初めての長編監督作。2つも賞をいただけて光栄な上に、グランプリをいただけるのは大変な名誉です」と、あらためてダブル受賞の喜びを語った。
『トルパン』は、カザフスタン南部のステップ草原地帯を舞台に、兵役を終えた青年と、羊飼い一家の娘・トルパンを中心とした人間模様を描いた作品。スタッフ、出演者ともに遊牧民に近い生活を送りながら撮影がおこなわれたという。
セレモニー終了後の会見で、ジョン・ヴォイトは同作品の二冠について、「この映画は本当にすごい、絶対にこれがいいと思ったなら、その作品が複数の賞を取っても構わない――審査員たちと初期の段階で意見交換した時、そう決めました。たくさんのいい作品がありましたが、作品として一番はどれか? という話になった時、満場一致で『トルパン』だったんです。そして一番いい作品を作った監督には、際立って光るものがあるのではないかと思います」と、その理由を語った。
また、「私だけの意見として聞いていただいて結構ですが……」と前置きした上で、『ブタがいた教室』『ハムーンとダーリャ』『プラネット・カルロス』を絶賛。「この3作品には小さなブーケを捧げたいですね。『ブタがいた教室』では、ある問題を抱え、それに直面しながら子供たちの成長していく姿が、本当にキラキラと輝いていました。生きることの大切さとは? その具体例を出してきたのが非常に素晴らしいと思います」とコメントした。
『トルパン』の二冠達成、しかも満場一致での東京サクラグランプリの獲得と、これ以上ない形で幕を閉じた今年のTIFF。次回以降も、多くの作品が上映されるとともに、世界に誇れる作品を次々に発信できる映画祭になることを期待したい。