茨城県生活環境部消防防災課の生源寺貴之氏によると、同県は地理的な条件に恵まれており、多数の死傷者を伴う自然災害の発生が少ない地域だという。地震の発生件数自体は多いものの、昭和以降震度6以上の地震災害はゼロ件だ。しかし、その分県民の防災意識が希薄になるおそれがあるため、特にいつ起こるか分からない大地震に対策に重点をおいた防災計画を策定しているという。初動対応が何より大切な災害発生時には、被害情報の収集のため、通信インフラの確保が重要な課題になるとしている。

NTTドコモ取締役常務執行役員の二木治成氏

訓練の終了前にあいさつした、NTTドコモ取締役常務執行役員(ネットワーク担当)の二木治成氏は、「システムとしての信頼性向上」「重要通信の確保」「通信サービスの早期復旧」という同社の災害対策3原則を紹介した。各原則に対応する具体的な施策としては、信頼性向上は回線の多重化や設備の耐震性強化、重要通信確保では公的機関の優先通話や被災地への通信手段の提供、そして早期復旧が今回の訓練内容をはじめとする災害対応設備およびその出動態勢などがそれぞれ相当する。

そのほか、ドコモでは「iモード災害用伝言板」をはじめ、905i/705iシリーズ以降(70Xiシリーズは一部機種)から新たに対応した「エリアメール」機能による緊急地震速報の配信など、サービス面でも災害対策に取り組む。

二木氏は、今年7月の全国ドコモ一社化により「従来にまして(地域間の)連携を強化し、より必要な所に必要なものを配備できる体制」が整いつつあると話し、4月に発表した新スローガンの「手のひらに、明日をのせて。」に沿う形で、「手のひらに安心」を届けていきたいとするメッセージでこの日の訓練を締めくくった。

そのほか訓練会場では、災害対策に関連したドコモの各種ソリューションも展示された。

ドコモと日本コカ・コーラが共同開発した災害対応型自動販売機。コカ・コーラと設置地域の自治体の間で災害支援協定を結び、災害時には飲料を無料で提供するモードに遠隔操作で切り替えることが可能。飲料の費用はコカ・コーラ側が負担するという

FOMAカードを搭載したPCとビデオカメラを利用して、簡単に動画中継を行える「Smart-telecaster」。受信側(上)では、最大10カ所からの映像を同時に受信できる

H.264コーデックをハードウェア処理することで高画質映像の伝送が可能な「mmEye-DX」。受信側(左)、送信側(右)にそれぞれ専用のハード(カメラは汎用)を設置し、FOMAカードを通じて映像を送る。パケット交換のほか、リアルタイム性が要求される場面では回線交換方式でも接続可能

ヘルメット内にカメラ、FOMA通信モジュール、GPSなどを搭載し、ハンズフリーでテレビ電話ができる「Uメット」。作業性を損なわず現場の状況をリアルタイムで伝えることができる

右は今回の訓練でも頻繁に登場した衛星携帯電話「ワイドスター」。通常は山間部の工事事務所などで使われることが多いという。ワイドスター、無線LANアクセスポイント、無線LAN対応携帯の「N902iL」「N906iL」を組み合わせることで、FOMA、IP内線電話、衛星電話(無線LAN経由)の3方式を1台の端末で実現するシステム「デュプレスター」(左)も展示

災害時にはNTT東日本・西日本とも緊密に連携。NTT東西では可搬型の衛星通信設備を各県に配備しており、これを用いて被災地に臨時公衆電話などを展開する体制を整えている