NTTドコモは17日、茨城県ひたちなか市の笠松運動公園で同社グループの総合防災訓練を実施し、その模様を関係者に公開した。この訓練は2002年より毎年行われているもので、今年で7回目。警察・自衛隊などとも連携し、大規模災害時における基地局被害の応急復旧プロセスを確認した。
現地対策本部で指揮を執ったNTTドコモ茨城支店長の市川正明氏 |
携帯電話が固定電話以上に重要なインフラとなりつつある現代においては、携帯電話事業者が災害に対して十分な対策を講じることが社会的にも求められるようになっている。通話に加えてネットへの接続が可能な携帯電話は、遠方の家族に安否を伝えたり、被災地に必要な情報を提供したりといった使い方が可能なので、非常時にも有効な情報ツールだ。それだけに、不通エリアが生じた場合には一刻も早い復旧が求められる。
訓練では、茨城県北部を震源としたマグニチュード6.8、最大震度6強の地震が発生し、基地局設備に故障や停電が生じたため、水戸市・ひちちなか市などで携帯電話が使えなくなったという事態を想定。周辺各支店に配備されている移動基地局車や移動電源車を被災地に出動させて不通地域の解消を図るほか、現地に設けた対策本部に災害対策用の機材などを運搬するといった活動がシナリオとして用意された。
この日は、地元のNTTドコモ茨城支店をはじめ、多摩支店、神奈川支店、千葉支店、埼玉支店、栃木支店、群馬支店、山梨支店といった首都圏一円の支店のほか、今年7月1日の全国ドコモ合併に伴い「株式会社NTTドコモ東北」からドコモの支社になった東北支社などが参加。茨城県警の白バイに先導されて、被災地を想定した会場中央に応急復旧用車両が続々と入場した。
移動基地局車は、地震による基地局の故障などで圏外となった場所に向かい、その周囲で携帯電話が使えるようにするものだ。ドコモでは各県に1台以上、全国で52台を配備している。1台で音声通話100回線以上を収容できるといい、災害時だけでなく、輻輳が予想される大規模イベントの開催時などにも出動している。基地局車から先の回線を確保する方法はいくつかあり、有線回線に接続する方法、マイクロ波で中継局に接続する方法などが挙げられる。そして、その両方とも不可能な場合、衛星回線を利用する方法もある。今回の訓練には、この衛星回線に対応した「衛星エントランス搭載移動基地局車」も参加した。
また、基地局や回線に問題がなくとも、大規模災害時には停電によって基地局がダウンする可能性がある。すべての屋外基地局はバッテリーを備えているといい、停電時も2~20時間の稼働が可能だが、停電が長引いた場合にそれをバックアップする移動電源車を全国で65台配備している。また、電源車が入れない場所にある基地局のために、人力で持ち運べる発動発電機も用意している。今回は、陸上自衛隊東部方面隊が訓練に参加し、発動発電機が被災地の基地局を模した装置のところまで届けられた。ドコモは陸上自衛隊の各方面隊と災害時相互協力協定を結んでおり、災害が発生した場合は双方必要に応じて、陸自はドコモの災害対策機器の運搬を、ドコモは陸自に携帯電話・衛星携帯電話の提供を行うことにしている。
さらに、東京のドコモ本社からヘリコプターで衛星携帯電話などの災害対策機器が会場に到着。現地対策本部に運ばれ、本部とドコモ本社との間の確実な通信路を確保した。