せめて2度以下の上昇に抑えなければならない

気温は産業革命以降、0.74度上がっている。1度上昇しただけでも、膨大な熱エネルギーが地球環境に影響を及ぼす。1.5度上昇すると、グリーンランド氷床の全面融解が始まり、100万種類の生物が2050年までに絶滅する。

2度上昇すると、1200万~2600万人が移住しなければならず、10億~28億人が水不足になるなど、人類が深刻な影響を受ける。また、珊瑚礁の97%が死滅する。

3度を突破して上昇すると、気候の崩壊が起こる。

将来予想としては、1.5度上昇が10年後、2度上昇が早くて20年後、3度上昇が2050年くらいとされている。

これによってもたらされる環境変化は、人類にとって「温暖化地獄」と言っても言い過ぎではない。

ちなみに欧州は1996年から、温度上昇を2度以下に抑えることを長期政策目標としている。

2006年の研究によると、2度上昇する確率は、2015年時点で上限が57%、下限が8%とされている。この結果に欧州の指導層は驚愕したのだが、日本ではあまり反応がないようだ。日本の経済界には、そんな予測数字は間違っているという反応すらある。

世界各地で起こる不気味な現象

生物種が絶滅した原因はいろいろあるが、温暖化が絶滅を加速している。これまでに、1700種の生物種が涼しい地域への移動を開始しているという。例えば、長崎アゲハが埼玉県あたりを飛んでいる。生物の大量絶滅を抑制するには、気温上昇を1.5度以下に抑え、10年間で0.5度以下に抑える必要がある。蝶や鳥など移動できる生物はいいが、植物だと枯れてしまう。

北極圏では10年間で0.46度上昇している。あと40年くらいで北方森林は枯れてしまう。グリーランド氷床の融解が加速しており、1年間で1500億トンの氷が失われている(南極では2000億トン)。

アマゾンの熱帯雨林は既に20%が破壊され、あと20年で60%が消滅するという。熱帯雨林が消滅すると植物が枯れてしまい、一部は砂漠化し、2030年までに900億トンの二酸化炭素が出る。

アマゾンの熱帯雨林の推移予想

シベリアの凍土が解けると、フランスとドイツを合わせたくらいの面積の湖が現れ、メタンガスが出る。

北極海氷の融解は商業的には利益があるが、世界の気候を激変させる

とどめは北極海氷だ。30年前は750万平方kmだったが、2007年9月には413万平方kmまで減っている。今、北極海にはぽっかりと穴が開き、2つの航路(北東航路と北西航路)が出現し、商業的・経済的にはホットな状況になっている。

北極海の海底には世界の化石燃料の1/4が眠っている。一部はロシアとノルウェイが開発しており、日本にも天然ガスが輸入されている。しかし、それを燃やすとさらに温暖化が進むことになる。

IPCCの予想では、21世紀末には、夏には北極海氷は消滅するようになる。ところが、実際には、専門家の予想よりも速いペースで減りつつある。5年以内に消滅するのではという予想も出ている。

北極海氷が消滅すると、気候が激変する可能性がある。例えば、北米大陸のロッキー山脈から西は大旱魃になり、地中海沿岸なども大旱魃になる。また、日本を含む中緯度地域の気候が激変する可能性があるが、これはジェット気流の位置が北に移動し、蛇行も始まる可能性があるためだ。ただ、コンピュータの性能が不十分なため、実際にどうなるのか正確な予想はできないのが現状だ。

この1年間、世界の科学者は北極海に釘付けになってきた。70名を超える世界の雪氷学者は予想に全力をあげている。3月~5月くらいの北極海氷の状況を見て、8月~9月にどうなるかを予想するコンペが実施されたが、今回、欧州のチームがこのコンペで優勝し、ほとんどぴたりと当てた。ちなみに、実際の面積は452万平方kmである。

北極海氷の融解は前述したように商業的には利益があるとはいえ、地球環境を激変させる可能性がある。