元々は映画監督志望の高校生
Flashアニメで、個性的な作品を創造するクリエイター・青池良輔。あの『鷹の爪』などで有名なFROGMANも、「青池さんの『CATMAN』に出会ったから、僕もひとりでFlashを使って作品を作ろうと思った」と青池作品からの強い影響を語った。そんな青池の最新作である『ペレストロイカ ハラペコトリオの満腹革命』のDVDが発売された。実写のミニチュア背景と、粘土で自作したキャラクターを撮影しデータ化して、Flashでクレイアニメ風に仕上げたこの斬新な作品について、緊急帰国した青池が語りつくした。
――青池監督はもともと映画監督を志していたそうですね。
青池良輔(以下、青池)「そうですね。高校2年生のときから、実写の映画をやりたかったんです。僕は田舎に住んでいて、娯楽が何もなかったので映画ばかり観てました。いい作品を沢山観て、『映画ってもしかしたら凄いかもしれない』って思って、僕は作文得意だし、絵もちょっと上手だし、学級委員とかもやったことあるし、『映画監督になるしかない!』などと単純に思ってしまったんですね(笑)」
――「映画監督になりたい」と思ってから、具体的にどのようなアクションを起したのですか?
青池「父親を説得するために、近所のお祭りや行事にビデオカメラを持って行き、それを撮影して父親に見せるようなことをやっていました(笑)」
――完全にドキュメンタリー作家ですね。
青池「でも編集機材など持っていないので、初めにカット割りを考えてから撮影に行くんです(笑)。まず、マラソン大会だったら、マラソン大会の旗を4秒くらいでパンで撮り、その後ここをこう撮って…などということを考えながら撮影するんです。編集しなくても見られるように、完全に順撮りなんです。それを父親にいくつか見せたら『わかった。大阪芸大行ってもいい』と…」
――大阪芸大卒業後、どうして海外を拠点に活動することになったのですか?
青池「芸大で映画を専攻していて、就職のときに知り合いを通じてカナダの映画制作会社を紹介してもらいました。ほかにチョイスもなかったので『じゃあ、カナダに行っちゃえ』って(笑)。でオフィスでは、ファイナンスだとか企画のディベロップメントなどをしていました」
――クリエイターというよりは、かなりプロデューサー寄りの仕事をなさってたんですね。
青池「そうですね。1回海外で映画作品の作り方を学ぶと、プロデューサーが映画を作るということが分かるんです。まずプロデューサーが枠を作った中で、この作品はどの監督にやらせれば自分たちが思い描く成功に近づくかを考えて監督を選ぶ。この方法が、自分には最適かもしれないと思いました。そのとき、コンピュータを使ってインタラクティブな企画書を作ろうと思ってました(笑)。若かったので、『若い俺にしかできない企画書を作ろう!』と思って。それでパソコンを勉強してたんですよ。そしたら『どうもFlashというものを使っていくと、なんかこれでひとりでもアニメが作れるらしいぞ』と知ったんですよね(笑)」
――それがきっかけですか?
青池「ええ、だいたい10年くらい前で、本当にパソコンに関しては素人でしたからね。仕事ではプロデュース的なことをしながらも、自分の中では、自分の作品を作りたいという気持ちがありました。ひとつの作品を作るには、多数のスタッフと凄いお金が動かないとできない。でも、Flashなら家に帰ってひとりで作業できるらしいということがわかって、作品のようなものを遊びで作ってたんです。Flashを教えてくれた友人にメールで作品を送ったら、その友人に『本格的に作ってみないか?』と誘われました。それで、契約してアニメーションのシリーズを作ることになったんです」