ここで重要となるのは録音レベルの設定で、高くし過ぎるとレベルオーバーで音が歪むクリッピングという現象が発生する。こうなると修正は不可能で、録音のやり直しとなってしまう。しかしAudio Cleaning Labでは外部機器から音声信号を入力することで録音レベルを自動設定することも可能なのだ。

録音レベルの自動調整機能を搭載、時間は掛かるが確実

曲を全て再生して解析するため設定に時間は掛かってしまうが、ミスがないというのは大きい。また無音部分を検知して曲単位でトラックを分けたり、自動録音停止といった機能も用意されている。

次のステップは「クリーニング」ボタン。これを使い、録音時に記録されてしまったノイズを除去できる。

さまざまなノイズを除去できる「クリーニング」。各エフェクトをクリックするとノイズの発生原因や設定方法が表示されわかりやすい

ノイズにはレコード針が埃を拾う「クラックルノイズ」、カセットテープの走行音である「ヒスノイズ」、電源に起因する「ハムノイズ」などがあるが、Audio Cleaning Labは複数のノイズ除去エフェクトを搭載しているので、様々な状況に対応可能だ。エフェクト設定が正しくないとうまくノイズは除去できないのだが、「自動設定」ボタンを使えばオーディオファイルを分析し、各種エフェクトを組み合わせた上、自動でノイズ除去が行われる。

「自動設定」をクリックするとこのダイアログが開き「分析」でファイルの自動分析およびエフェクトの設定が行われる

ノイズの種類を画面上で選び、設定できるステップバイステップ機能も用意

効果はもちろん各ファイルによって異なるが、幾つか試した範囲では完全ではないものの、ノイズの低減を実感できた。もちろん自動設定を元に微調整したり、完全にマニュアルで設定することもできるので、かなり使えそうだ。

DirectX/VSTプラグイン対応、DVD-Audio作成も

続いて「マスタリング」ステップにて、ステレオイメージを調整できる「Stereo FX」や、各音域をブースト/カットして微調整する「Equalizer」、音圧を調整する「Dynamics」など、各種エフェクトをセットしてマスタリング作業を行う画面。

各エフェクトをひとつのスライダーでシンプルに使いこなせる「マスタリング」。クリーニング画面同様にステップバイステップ機能も用意されている

各エフェクトにつきひとつのスライダーのみでシンプルに設定することも、また設定画面を開いて細かく設定することもできる。

「EDIT」をクリックすれば各エフェクトの設定画面が開く。EQは4バンドパラメトリックEQと10バンドグラフィックEQを用意

またAudio Clening LabのエフェクトはDirectX/VSTプラグインに対応している。そのため標準添付のエフェクトでは物足りなくなったときでも、フリーソフトや製品版のエフェクトプラグインをインストールし、Audio Cleaning Labから呼び出して使うといった拡張が可能だ。 そして最終ステップとなる「音声を保存」では、Audio Clening Labで行った波形編集を適用し、さまざまな形式で保存できる。

最終ステップの「音声を保存」では編集したファイルの保存や外部メディアへの書き出しを行う

オーディオファイルはWAV、MP3、WMA、ACC、OGG Vorbisに対応。CD-Rを使えば音楽CDを作成できるのはもちろんだが、注目すべきはDVD-Audio作成にも対応していることだ。

「音楽DVD」では2chステレオのDVD-Videoフォーマット、そして今では使われることの少なくなってしまった4chサラウンドのDVD-Audioフォーマットを選ぶことができる

そう、実はAudio Cleaning Labは最大4chサラウンドの波形編集にも対応している。4chサラウンドは、NHKのBSアナログ・ハイビジョン(9ch)などで採用されているものの、現在では再生対応機器が少ないのが難点。しかし、個人でサラウンド音声のメディアが制作できるのは興味深い。

このようにAudio Cleaning Labは価格を考えればかなり多機能であり、またプラグインによる拡張性に対応しつつも、設定の自動化や画面上での操作説明により初心者にも取っつきやすいソフトになっていることがポイントだろう。さらに操作を動画で見せるチュートリアルビデオも用意されている。高サンプリングレートに対応したオーディオインタフェースを使っている人にとっては最高24bit/48kHzまでの対応となっていることが残念なところだが、アナログメディアのデジタル化に初めて挑戦する人ならば、チェックしておいて損はないはずだ。