なぜIPO件数が減るのかを考えれば、人々の投資意欲が失われ、ベンチャー企業(とVC)が本来調達したいと考える資金がIPOを通じて得られないと判断しているからだ。そのためIPOを延期、あるいはIPOそのものを止めてしまい、大手企業による買収など別のルートを探ることになる。
IPOに関して面白いデータがある。2008年第3四半期に米国内でIPOを達成した企業はわずか5社、調達資金総額は9億3,500万ドルだ。これは前年同四半期の39社で120億ドルという金額と比較してもかなり減少している。この期間に上場した5社のうち、初日の取引で公募価格を上回った企業は1社もなく、すべてマイナス水準で取引を終えている。そして10月1日時点で公募価格より高い株価を維持しているのはEnergy Recoveryの1社のみで、他はすべて20%以上マイナス、China Distance Educationに至っては7月30日の公開初日から40%以上の下落が続いている。このように最近のIPOは公募価格割れを起こすのが普通で、資金調達先としての魅力はかなり減衰しているといえる。
"シリコンバレー最後"のIPO企業になるか!?と期待されたFacebookだが、共同創業者を含むエグゼクティブの退社が相次ぐなど、その将来性に疑問を投げかける声も出始めている。11月1日から同社社員に対して自社株購入を許可すると言われており、来年早期にも…と囁かれたIPOは、当面先になりそうだ(パロアルトのFacebook本社) |
IPOが駄目ならば、大手企業の買収によるM&A戦略への切り替えが1つの"ゴール"へのルートして浮上してくるが、こちらもなかなか厳しいようだ。特に大手IT企業自身も金融危機を前に体力勝負の時代へと突入しつつあり、やはり件数としてはM&Aも減少してきている。Dow Jones VentureSourceによれば、VCが絡んだ企業のIPOやM&Aを通して調達した資金は過去10年間で最低の水準にまで落ち込んでいるという。たとえば2008年第3四半期の場合、45億7,000万ドルと1年前の134億ドルと比較して66%減少している。件数ベースでいえば2007年第3四半期のIPOが11件だったのに対し、2008年第3四半期は前述5社のうちRackspace Hostingの1社のみだ。M&A件数も同様で、前年の116件に対し66件とおよそ半減している。
2008年を第3四半期までの3四半期分でカウントすると、VCベースのベンチャー企業のIPOはわずか7件だ。これはドットコム・バブルの弾けた直後の2001年の13件や2002年の14件と比較しても極端に少ない。M&Aでみても、2007年の3四半期が327件だったのに対し、2008年は247件まで減少している。もはや「IPOができないなら大手に買収してもらう」というルートの選択も難しくなっているようだ。