ユースホステルならではの談話室も大切に
ユースホステルは場所によって、そのスタイルが大きく異なってくる。地方の観光地であれば、従来のイメージに近いものが多いが、首都圏などではビジネスホテルと同様な施設も少なくない。
「横浜ベイサイドYH」は宿泊定員41名。洋室のシングルが3室、3人用から10人用までの洋室ドミトリーが5室、和室が2室(3人用と5人用)、そのほか浴室、飲食コーナー、有料シャワー、コインランドリーなどの施設が用意されている。宿泊費は2,900~3,500円。最も重視されているのは、談話室。各地からやって来た旅人が集い、交流を深める談話室は、ユースホステルの核となる場所だ。
一人旅であっても、談話室に来ればいろいろな人に出会うことができる。国籍も年齢もさまざまな人々が気軽に語し、情報交換などを行う空間、それがユースホステルの醍醐味である。普通のホテルや宿では、なかなか体験できないことだろう。熟年層の間にユースホステル人気が高まっているのも、単なるノスタルジーだけではなく、談話室を求めているためかもしれない。
「横浜ベイサイドYH」の場合、宿泊客の約3割は外国人だという。月によって出身国にばらつきが見られるが、今年8月は韓国が67人と最も多く、続いてフランス(25人)、台湾(22人)の順だった。7月はアメリカ(42人)、英国、オーストラリア(ともに12人)、韓国(9人)という結果だった。オープンした4月はまだ認知度が低く、外国人客は23人に過ぎなかったが、8月には223人を数えた。利用者数の総計も4月の159人から8月の772人と着実に増加している。今後も旅行誌や旅行サイトで情報発信を行い、利用者数を増やしていくことを課題としている。
「横浜ベイサイドYH」の場合、横浜で開かれる国際会議ため、外国からの参加者が利用することもある。ドミトリーは旅行者が、洋室シングルは長期滞在のビジネスマンが利用するケースが多いという。つまり「横浜ベイサイドYH」は旅行者、ビジネスマンともに使いやすい、ユースホステルらしさを保った施設だと言えるだろう。
国内のさまざまなユースホステル
横浜以外のユースホステルにも注目したい。まず、もうじき紅葉の季節を迎える北海道。「知床岩尾別YH」は知床世界自然遺産の中にあり、大自然の醍醐味を満喫できる。電気は自家発電で、携帯電話は通じない。この世間から隔絶された環境は、今ではかなり貴重だと言えるだろう。「大雪山白樺荘YH」は道内最高峰の旭岳の中腹に建つ。標高は約1,100メートルなので、冬はスキーも存分に楽しめる。
東北では、民話の里として知られる遠野の「遠野YH」、日本三景の松島から10キロほどの位置にある「パイラ松島・奥松島YH」などをはじめ、観光名所を訪ねやすい施設が点在している。
関東甲信越では、葛飾北斎ゆかりの地であり、栗の里としても知られる長野県小布施町の「おぶせの風YH」、全室バス、トイレ、テレビ、ビデオデッキ付きで普通のユースホステルよりワンランク上のユースゲストハウス「北軽井沢ブルーベリーYGH」や、まさに今ぶどうの収穫が行われている山梨県甲州市の「勝沼ぶどう郷YH」などの人気が高い。
首都圏では明治神宮の森に隣接した「東京代々木YH」が有名だ。60名収容で全室個室。宿泊客の約半分が外国人だという。そのほか、「スカイコート小岩YGH」「スカイコート浅草YGH」など、ビジネスホテル同様の施設があるが、海外旅行に出かける人にとって要注目なのは「スカイコート成田YGH」。旅行前でも後でも、ここに宿泊すれば車を最大20日間無料で預かってくれるサービスがあるのだ。
各ユースホステルには独自のツアーやイベントも用意されるなど、まだまだ色々なサービスがある。詳細はウェブサイトを参照していただきたい。もちろん、海外のユースホステル情報も見られるし、経営者の募集も行われている。ユースホステルを利用したことがある人もない人も、安く滞在できるこの施設を宿泊施設の1つに取り入れてみてはどうだろうか。実は意外に便利なところにあったり、それぞれ異なる特徴があったりして、安いだけではないユースホステルの魅力に改めて気がつくはず。知らなかったユースホステルのさまざまな姿を実際に宿泊して体感しよう。