日本はこれから確実に高齢化社会となる。65歳以上の高齢人口と15~64歳の生産年齢人口の比率をみても、昭和35年(1960)年には1人の高齢人口に対して11.2人の生産年齢人口がいたのに対して、平成17(2005)年には1人の高齢者に対して現役世代3.3人で支えることになっている。団塊世代の高齢化などにより、今後も高齢化率は上昇を続け、現役世代の割合は低下し、平成67(2055)年には、1人の高齢人口に対して1.3人の生産年齢人口で支えねばならないという比率になる。そこで今後研究の必要があるとされているのが、高齢者に優しいコンピュータ、アクセシビリティに優れたOS、各種デバイスの開発だ。
誰もが容易に理解でき、誰もが使いやすいと感じるパーソナルコンピュータの実現。マイクロソフトでは、Windows Vistaによって実現されたアクセシビリティを「CEATEC JAPAN 2008」の会場で公開。10名ほどの高齢者の方々に、Windows Vistaの使い勝手や、マウスなどの入力デバイスを開発するサードパーティの製品を、直接触って体感してもらうイベントが催された。
コンピュータへの興味はティーンエイジャー以上!
取材でお伺いしたのはマイクロソフトのブースではなく、アクセシビリティ PLAZA。このブースを主催する情報通信アクセス協議会は、障害者・高齢者を含む全ての人々が、電気通信設備を円滑に利用可能なものとする(アクセシビリティを確保する)ことを通じ、電気通信の均衡ある発展のために活動する組織だ。
その考え方や理念に共感した企業が、小さいブースながらもそれぞれ趣向を凝らした展示を行っていた。 なかでも、ひときわ大きな人の山ができている、しかもお爺様、お婆様方で賑わっているブースがあった。それが今回取材させていただくシニアの方々だと知る。
驚いたのは、彼らのその熱心さだ。解説員の言葉を一言一句取りこぼさぬようメモを取りながら、解説員へ矢継ぎ早に質問するなど、貪欲なまでの"熱意"を感じさせる。「パソコンがあるのが当たり前」の私たち若い世代とは、また異なる逞しさを感じさせてくれたのが印象的だ。たとえば、解説員が「かおマウス」(顔の形をしたボード型のマウス)の説明をしていると、「ダブルクリックは?」「ドラッグはどうするの?」「カーソルはどうやって動かすの?」などと、ありとあらゆる疑問をぶつけている。10代や20代前半の若者以上に、パソコンと言うものに熱心なのだ。
じつはそれもそのはず。このお爺様、お婆様方は、パソコンスクールに通われている生徒さんの集まりで、なかにはブログを楽しんだり、デジタルカメラで撮影した写真をCDに焼いて配るなど、高齢者とは思えぬほどパソコンを活用なさっているのだという。しかも、高齢者のなかのいわゆる"エバンジェリスト"的な役割も担っているそうで、地域高齢者ネットワークのなかで「パソコンのことならあの人に聞けばいい」という世話役、ちょっとした先生的な存在なのだそう。それ故、パソコンに対する熱意も高いのだろう。