さらに、最新GPUのパフォーマンスを紹介した。1996年当時1TFLOPSをはじめて超えたスーパーコンピュータは広大なスペースと500kWの電源、そして500kWの冷却施設が必要とされた。そして現在、Radeon HD 4850は1基のGPUで1TFLOPSの演算性能を持ちながら110Wあるいはそれ以下の消費電力でこれを実現する。このパワーでどのようなことが可能となるのか。それを紹介したのは、Julesworldの創設者であるJules Urbach氏だ。まず、AMDの製品デモンストレーションで度々用いられてきたイメージキャラクター「ルビー」のムービーに対しライティング、カメラポジション等を変更できるなどリアルタイムレンダリングであることを説明した。そして、こうしたことが可能になったことで、さらに新しい可能性が出てくるとして、さらに現在最先端のグラフィックテクノロジを紹介していった。
ルビーのデモは相当リアリスティックなものであるが、Jules氏は「もうちょっとうまくできないかなと思っている」と言う。「人間の肌や顔というのは作りにくい」とのことだ。そこで同社が開発したものとして「ライトステージ」を紹介した。スライドで紹介された左右2つのフェイスはボクセルデータであり、光源の角度を変えるなどただの実写ではないことを説明した。この映像はRadeon HD 4800シリーズでGPU処理させているとのこと。ハリウッドの映画などで必要とされる膨大なデータもGPUであれば効率的に処理でき、さらにこの技術自体は映画以外にゲームなどでも利用可能であると言う。
さらにJules氏はこうした技術を様々なところで使いたいとし、男性が歩いている映像「ライトステージ6」を紹介した。ライトステージ6の実体は大きな球体であり、この中に入るものはすべての角度からキャプチャされる同氏曰く「ホログラフィックのレコーダ」。キャプチャされたデータはGPUの力ですべて圧縮、リアルタイムでレンダリングされ、一度データ化されたものは複製やアニメーションなど様々に利用できると説明した。
このライトステージの技術の今後の状況にも触れた。ひとつはImage Metrixと共同開発した「Emily」を紹介。ライトステージとリアルタイムフェイシャルアニメーション、キャプチャ技術を組み合わせたものと解説された。もうひとつは映像を出力する側の技術「ホログラフィックプロジェクター」。Jules氏が紹介したのは高速回転するミラーが光を反射することで空間に映像を浮かび出す方式の技術だ。まずポリゴンデータ、そしてカラー映像を映し出すテスト映像を流した後、先に紹介した歩く男性の映像をこのホログラフィック装置で映し出し、リアルタイムのレンダリングとホログラフィックによる立体映像を融合した「スターウォーズのような」技術が実現間近であることを紹介した。どの技術も最先端3D映像にただ驚くばかりだが、同氏は「これから数カ月、もっともっとすごいものをお見せできると思っています」と、さらなる新技術を期待させるコメントで解説を終えた。 。
再び、スピーカーがリック・バーグマン氏に戻ったところで、2009年のGPUに関して見通しが紹介された。同氏は現在55nmプロセスで製造しているGPUが「来年は40nm、最終的には32nm」とプロセスの微細化について言及したほか、Windows 7やDirectX 11といった新しいAPI、GPGPUのためのAPI「Open CL」などに期待を寄せている。同社製品のパフォーマンス、そしてその処理性能を用いた数々の最先端技術の紹介を終えたリック・バーグマン氏は「2018年のCEATECでは私はここには来ず、ホログラフイメージでお話をするかもしれません」といったジョークを交え、「AMDといたしましてはコミットメントを持ってビデオの体験をこれからも追求、次のレベルに持って行きたい」と基調講演を締めくくった。