デジタルコンテンツの流通が進まない理由については、著作権制度も問題などさまざまな原因が指摘されており、著作権の権利を制限する「ネット法」などの案も出てきている。では、実際にコンテンツを流通させるネット配信事業者は、その原因をどのように考えているのか? コンテンツ配信事業に力を入れているケイ・オプティコムの田邉忠夫社長に聞いた。

「デジタルコンテンツ流通の促進にとって、配信の際の技術的コストがネックになっている」と語るケイ・オプティコムの田邉忠夫社長

ネット配信事業者の技術的コストが増大


――デジタルコンテンツのネット配信がなかなか進まない理由は何でしょうか?

大きく3つ挙げられると思います。まず挙げられるのが技術的な理由です。ネット配信のための設備コストは、需要が増えるにつれて膨大なものになっています。これがネット配信事業を経営するためのネックになっています。

もっとも大きい問題としては、画像圧縮技術や著作権保護技術の問題があります。さまざまな画像圧縮技術がありますが、これらは乱立しており、汎用性のある統一された規格がないのが現状です。さらに、洋画のメジャー作品などの配信の際は、その都度最新の著作権保護技術への対応が求められることが多く大きなコスト増加の一因となっています。

――デジタルコンテンツを流通させるための統一基準がないわけですね。

コンテンツの調達面でも問題があります。有力なコンテンツホルダーは、人気の高い作品ほど貸し出す際などに最低保証金額(Minimum Guarantee、MG)を求めてきますが、非常に金額が高いのが現状です。従って、売れればいいのですが、売れない場合もあるためリスクが大変高くなっています。

また、実演家らの権利者側も、本業の売り上げへの影響を恐れてネット配信には消極的でなかなか許諾してもらえない場合があります。

――技術的理由と並んで、コンテンツ調達面での難しさがあるわけですね。

ネット配信が進まない3つ目の理由としては、ネットユーザーの問題があります。Gyaoなどが典型ですが、多くが広告付きの"ただ"のコンテンツです。この"ただ"の概念が日本では強すぎて、お金を出してまでネットでコンテンツを見ようという人は少ないのではないでしょうか?

ネットでコンテンツ売れる「土壌づくり」が必要


――これらの理由を克服して、ネット配信を進めるためにはどうすればいいとお考えですか?

配信が進まない理由の裏返しとなりますが、ネット上でも確実にコンテンツが売れる土壌づくりをするべきではないでしょうか?

当社でネット配信するまでの流れを言うと、映画上映あるいは地上波放送の後、2~3カ月経ってDVD化、さらにその後4~5カ月後にネット配信されるという流れになっていて、ネット配信は"三番煎じ"ぐらいの位置づけです。

インターネット配信でコンテンツが売れるような基盤ができれば、もっとネット配信は進むはずです。

また、画像圧縮技術や著作権保護技術を統一標準化し、技術導入のためのコスト軽減をすることが絶対に必要です。我々通信事業者にコストがかかりすぎれば、配信そのものができません。そうなれば、コンテンツ制作事業者もお金が稼げなくなるわけで、現在はこうした悪い循環になっているのではないでしょうか?

――なるほど。では、ケイ・オプティコムではどのようなネット配信事業を行っているのでしょうか?

具体的には、PC上でのVODサービスである「eonetシアター/PC」があります。これはコンテンツホルダーから7,000タイトルほど購入し、配信しています。

PC上でのVODサービス「eonetシアター/PC」

ShowTimeと提携して提供している「ShowTime for eo」

その他には、ShowTimeという配信事業者と提携して提供している「ShowTime for eo」、落語のライブ「ライブ繁昌亭」、関西のニュースを動画で配信する「eo光かんさいニュース」など関西独自のコンテンツなどを配信しています。

一流の落語家たちの落語をライブで見ることができる「ライブ繁昌亭」

関西のニュースを動画で配信する「eo光かんさいニュース」

これらは、コンテンツサプライヤーが著作権処理をしたものを配信しているので、我々が直接著作権処理をしているわけではありません。