「とりあえず、やってみる事が大事」

――酒井さんは、デザイナーやモデルとしての活動以外にも、アーティストとしての音楽活動や、作家活動もされています。ご自身のなかで、これらの活動に違いはあるのですか?

酒井「『自分の頭の中のアイディアやファンタジーを形にする、具現化する』というコンセプトはほぼ同じなのですが、意識としては分けています。今はやっぱり洋服がメインですね。私は他の活動をたくさんしているイメージがあるせいか、皆さん驚かれるんですが、私はここ(『Made in COLKINIKHA』の事務所)に毎日、出勤してるんです。デザインだけでなく、工場や取引先の方々と電話で様々なやりとりをしてます。これが、私の日々の生活のベースです。先のことはわからないんですけど、今は洋服を作ることが私のベースなんです」

――この事務所で『Made in COLKINIKHA』の洋服作りを、すべてこなしているのですか?

酒井「はい。工場は一番近いところで代官山、遠いところだと例えばデニムは岡山で作ってます。さらに刺繍等はトルコで作業していたりもするのですが、商品の打ち合わせからデザインまで、すべてこの事務所でやっています。倉庫も事務所の地下にあって、在庫管理もしています」

――何人ぐらいのスタッフで、業務をしているのですか?

酒井「核となるスタッフは私を含め3人で、次に密接なのはパタンナーさん。流動的なスタッフも含めるとシーズンによって違うのですが20人ぐらいですね。普通の商品のほかに、一点モノも制作していて、その制作アイテムに合わせて、様々なスタッフが出入りしているアトリエという感じですね」

――酒井さんの「頭の中のアイディアやファンタジーを具現化する」というテーマは、通常の消費生活では満たせない事なのでしょうか? 例えば、世の中にはかわいいモノやお洒落なモノが溢れていますよね。

酒井「もちろん私もひとりの消費者として、買い物は大好きです。でも、自分の頭の中にある好きなモノ、アイディアやファンタジーを具現化していくっていう行為が、楽しくてやめられないんですよね。それが音楽なのか、洋服なのかっていうのは何でもいいんですけど、やっぱり今はファッションが好きなので、洋服を中心にそれをやってるんです。それが、日々の生活の充実感に繋がっています」

――そういうモノ作りの日々の中で、酒井さんが心がけている事はありますか?

酒井「モノを作っていると、人が集まってきてくれたり、それを見た人が『一緒に何かやりたい』と言ってきてくれるんです。その良い波というか、流れにはいつも乗っていたいと思っています。そのためにも、色々な事を柔軟にしておきたいんですよね。とにかく服飾の職人であるというのでなく、様々な人と出逢いモノを作るために、いつも身軽に動ける余裕を持っていたいんです。だから、企画が面白ければ、音楽でも本でも、作りたいですね」

――最近はPerfumeのプロデューサーとしても有名なcapsuleの中田ヤスタカさんと、音楽ユニット『COLTEMONIKHA(コルテモニカ)』として、アーティスト活動もされていますね。

酒井「最初は中田ヤスタカさんの事も詳しく知らなかったんですよ。友達の友達を通じて知り会って、話をしてみたら面白くて、一緒に音楽をやってみようとなったんです。こうして新しいことが生まれるという、そういう生き方自体が楽しいです」

――ジャンルを問わず、「自分で何か表現したい」とか「モノ作りをしたい」と思っても、一歩目を踏み出せずに、どうしたらいいかわからない人も多いと思います。酒井さんのこれまでの経験から、そんな人たちに何かアドバイス出来る事ってありますか?

酒井「とりあえず、やってみる事が大事だと思います。やる前に、『失敗するんじゃないかな』とか思っちゃうと、出来ない事が多いから。とりあえずやってみると、その後に何が足りないかとかわかってくるんです。私もブランドを立ち上げた時に、成功するという確信はなかったのですが、とりあえずやってみました。企画を持ってプレゼンに行ったり、色々な所に電話をして話を聞いてもらう……。それで、ひとつ話が成立すると、信用が生まれて、また次の話ができるんです。もちろん、自分も失敗はあるんですけど、とりあえずやってみる。あとは、沢山周りの人に話をすることですね。なるべく、自分のやりたい事を周囲の人に話す。そういう事を恥ずかしがらずにすることが、具現化への近道だったりするんじゃないかなと思います」

「自分の頭の中にあるモノを具現化する」という簡単なようでいて、実はクリエイターにとって一番困難なテーマ。それに取り組む事が「楽しくてやめられない」と語る酒井景都。彼女がモデルでもあるという事実に関係なく、その笑顔は輝いていた。

セレクトショップ「COLKINIKHA green SHOP」

酒井景都が手がける「Made in COLKINIKHA」初となる期間限定セレクトショップ「COLKINIKHA green SHOP」が、9月20日~9月28日(10:00~21:00)、渋谷パルコ(東京・渋谷)part1、2Fにオープン。"泉"と"森"をテーマとし、「Made in COLKINIKHA」秋冬の新作ラインナップを販売するほか、酒井景都自身が厳選した商品を取り扱う。 ※9月23日は13時から、酒井景都が1日店長としてお店に立つ予定。
参加ブランド:Aquvii (アクビ・雑貨)/ bortsprungt. (ボシュプルメット・服) / cheap by yuyu (チープ バイ ユユ・服) / dhyana. (ディアーナドット・靴) / hipBORNtwin(ヒップボーンツイン・アート) / macotton (マコットン・アクセサリー) / Made in COLKINIKHA (メイド イン コルキニカ・服) / SATSUKI (サツキ・アロマ) / ScarolicK (スカーロリック・アクセサリー) / 2e (ニイー・ステーショナリー)など

インタビュー撮影:岩松喜平