ITパスポート試験の新設

新たに設けるITパスポート試験は共通キャリア・スキルフレームワークのレベル1にあたり、ITに関して社会人が共通して備えておくべき基礎的な知識を問うものだ。情報処理試験の中ではエントリーレベルといえるが、出題範囲はストラテジー/マネージメント/テクノロジーの3分野を幅広くカバーする。

受験者層別のITパスポート試験合格のために必要な学習内容。なお、ITパスポート試験は現行の初級アドミニストレータ試験を発展的に解消させたものであり、初級アドミニストレータ試験の合格者はITパスポート試験の合格水準に十分に達しているという

新制度の普及・広報に向けた活動

IPAでは新試験制度の導入にあたり、様々な広報・普及活動を実施している。

まず手始めに昨年(2007年)12月にITパスポート試験のサンプル問題を公開したのに続き、今年(2008年)2月-3月に各地で説明会を開催。4月にはITパスポート試験以外についてもサンプル問題を公開、6月にはITパスポート試験における知識・技能の細目(シラバス)を公開している。

ここでいうシラバスとは、項目ごとに学習の目標や内容、サンプル問題を例示したものであり、IPAでは受験者が学習指針として、また企業や学校では教育プロセスにおける指導指針として有効に活用することを望んでいる。

今後は10月に基本情報技術者試験(レベル2)および応用情報技術者試験(レベル3)の、2009年3月には高度試験(レベル4)のシラバスを、それぞれ公開する予定だ。これらはいずれもIPAのサイトで誰でも閲覧できる。

現行制度と新制度との出題範囲等の対比

試験区分 レベル 主な変更点
基本情報技術者試験 レベル2 午前試験は現行と同じ分野。午後試験ではマネージメント系とストラテジー系を追加。またプログラミング言語では従来のC、COBOL、Java、アセンブラに加え、表計算も選択可能に。
応用情報処理技術者試験 レベル3 午前試験は現行のソフトウェア開発技術者試験にストラテジー系を追加。午後試験は現行のソフトウェア開発技術者試験にマネージメント系とストラテジー系を追加し、受験者の専門分野に応じて選択可能とする。
ITストラテジスト試験 レベル4 現行のシステムアナリスト試験と上級システムアドミニストレータ試験を統合し、経営寄りの事業戦略立案やIT戦略の実行管理・評価、組み込みシステムに関する製品規格や開発計画策定・推進を追加。難易度はやや下がる。
システムアーキテクト試験 レベル4 現行のアプリケーションエンジニア試験と比べ、全体最適の観点からの情報システムの構造設計および情報システムのシステム方式設計を明確化して重視。また組み込みシステムのアーキテクチャ設計を選択問題として追加。
プロジェクトマネージャ試験 レベル4 現行のプロジェクトマネージャ試験とほぼ同じだが、難易度はやや下がる。
データベーススペシャリスト試験 レベル4 出題分野・難易度とも現行のテクニカルエンジニア(データベース)試験とほぼ同じ。
ネットワークスペシャリスト試験 レベル4 出題分野・難易度とも現行のテクニカルエンジニア(ネットワーク)試験とほぼ同じ。
エンベデッドシステムスペシャリスト試験 レベル4 出題分野・難易度とも現行のテクニカルエンジニア(エンベデッドシステム)試験とほぼ同じ。
情報セキュリティスペシャリスト試験 レベル4 現行のテクニカルエンジニア(情報セキュリティ)試験と情報セキュリティアドミニストレータ試験を統合し、セキュリティ技術に重点を置く出題内容とする。
システム監査技術者試験 レベル4 出題範囲・難易度とも現行試験とほぼ同じだが、情報技術について現行試験よりも広く深い理解を求める。また選択問題として組み込みシステムを追加。
ITマネージャ試験 レベル4 現行のテクニカルエンジニア(システム管理)試験の出題範囲をJIS Q20000およびITILに沿って再編し、マネージメント面をより重視。