これほどまでにハイテクな装備なのに、やたらとハンダ付けのシーンが出てくるのはご愛敬。"天才的な発明家"ならば、表面実装のLSIだろうが多層基板だろうが、余裕でハンダ付けをするのだろう。なにせトニーは4歳で回路基板、6歳でエンジンを作った男だ。「12歳でエンジンをバラした」などというピッコロおやじの記録など比較にならない。
それはともかく、製作者が「わかっているなぁ~」と思ったのは、ハンダ付けを手伝ってくれるロボットアームが出てきたことだ(トニーからは"使えない奴"と罵られていたが)。ハンダ付け時には、左手に糸ハンダ、右手にハンダごてを持つが、残念ながらパーツを固定する腕がないのだ。「3本目の腕」が欲しいと何度思ったことか。"ハンダ付け支援"用の家庭用ロボットアームなんてのも商品としてはアリかもしれない。
ところで、このアイアンマンのキーとなる技術が「アーク・リアクター」と呼ばれるデバイスである。仕組みは良く分からないが(映画の公式資料によると"熱プラズマ反応炉"とある、つまり核融合か?)、手のひらサイズと非常に小さく、女性秘書が片手で持てるほど軽い。これがアイアンマンの全エネルギーを供給しているのだ(これをトニーは拉致されている間に作ってしまった!)。
アーク・リアクターが発生するエネルギーは、トニーが語ったところによると「毎秒3GJ(ギガジュール)」だという。J(ジュール)はあまり馴染みのある単位ではないので、分かりやすいようW(ワット)に変換すると、W=J/sであるから、これはそのまま3GWということになる。最新の原子力発電でも出力は1基あたり138万kW(=1.38GW)程度だから、アイアンマンでは原発2基分以上のパワーを使っていることになる。ある意味、壮大なエネルギーの無駄遣いである。
原発2基分以上のエネルギーを使っておきながら、「3トンの物を持ち上げることができる」というのはあまり効率が良くないような気もする(普通にクレーン車でいいんじゃあ…)。試しにウチのMANOI君で適当にモーションを作ってみたところ、ペットボトル2本弱(800g)くらいなら簡単に持ち上げることができた。この機体は800mAh/10.8Vのバッテリで20分間くらい動くので、大雑把な計算ではあるが消費電力は26W程度と考えられる。ワットあたりの持ち上げ重量で見ると、MANOIは30g、アイアンマンは1mgという結果になる。サイズが大きいアイアンマンには不利な比較ではあるのだが、今後は省エネも期待したいところ。次の敵は地球温暖化だトニー!
さて、完成したアイアンマン・マークIIIを使ってトニーは戦いに赴くのだが、その最後の相手は……。戦うのはパワードスーツ対パワードスーツ、技術対技術、コピー対オリジナルである。これで盛り上がらないはずはない。空中戦も交えたバトルは迫力満点で、早くも次回作が楽しみになってしまう。
余談ながら、最後にアイアンマンで気になった点を1つ。マークII以降では目がピカピカ光っていたのだが、普通、眩しいのであんな場所にわざわざライトなど配置しないと思う。しかしラスボスの目も光っていたので、これは業界(?)のデフォルト装備なのだろうか(何の役に立つのか不明だが)。以前、某ロボットの開発者が「ロボットには眉毛があるべきだ」とする"ロボット眉毛説"を熱く語っていたが、トニー・スタークにもこういったこだわりがあるのかもしれない。
『アイアンマン』は9月27日より日劇3ほかにて全国ロードショー!
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