9月27日、ソニー・ピクチャーズ配給の新作映画『アイアンマン』が、日本全国で公開される。先に公開された米国では、ぶっちぎりで2008年度北米興行収入No.1を達成し、今も興行成績をのばしているという。
もともと「アイアンマン」は、アメコミの人気キャラクターとして、米国では高い知名度を持つとのことだが、私はパソコンについては多少詳しいが(私の本業は、パソコン系ライターで、パソコン歴は25年、ライター歴は18年になる)、アメコミには疎く、恥ずかしながら、この映画で初めて「アイアンマン」というキャラクターを知った。しかし、映画『アイアンマン』は、アメコミの原作を全く知らない私でも、文句なしに楽しめる作品であった。ストーリーがわかりやすく、登場人物の誰もが魅力的だ。話のテンポもよいので、途中でだれることなく、2時間5分という上映時間があっという間に感じられる。
パソコンマニアも満足できる新旧名機の競演
アイアンマンは、残虐なシーンがなく、家族みんなで安心して楽しめる映画だ。もちろん、話自体はフィクションだが、科学技術関係の考証も比較的しっかりしており(ツッコミどころがないわけではないが)、細かなところまでこだわって作られているので、マニア心をそそる映画でもある。そこでここでは、パソコンマニアとしての視点から、アイアンマンの魅力を語っていきたい。
アイアンマンは、軍事企業「スターク・インダストリーズ」のCEOであり、天才エンジニアでもあるトニー・スタークが、自ら製作したハイテクパワードスーツを着て、世界の平和をもたらすために戦う話だ。パワードスーツは、IT技術とロボット技術の結晶であり、パソコンを利用して設計や制御を行っている。そのため、パソコンが登場するシーンが非常に多く、重要な小道具としての役割を果たしている。パソコン関連に関しても、きちんと監修者がいるようで、パソコンマニアならニヤリとさせられるシーンも多い。
ごく短い間しか登場しないものもあるので、全てのパソコンを確認できたわけではないが、少なくともアップル、東芝、HP、デル、レノボのパソコンは出てきた。まず、映画の序盤で、トニー・スタークの人物像が紹介されるが、彼の幼少時の写真に、懐かしのAPPLE IIが登場。他にも当時のパソコンが一緒に出ていたと思うが、写真が映るのは一瞬なので、残念ながら確認できなかった。古くからのパソコンマニアの方は、よく注意していて欲しい。
テロリストに拘束されたトニー・スタークが、テロリストを欺いてパワードスーツを開発し、脱出に成功するまでが、前半の山場だ。そのパワードスーツの開発に使われたパソコンが、テロリストが所有していた東芝のdynabookだ。もちろん、最新モデルではなく、ポインティングデバイスにアキュポイントを採用し、懐かしいグレー筐体のdynabookである(おそらく闇ルートで手に入れたものであろう)。東芝のdynabookは、ノートパソコン市場で長らく世界No.1シェアを誇っていた製品であり、テロリストが入手していても不思議ではない。起動時に表示される画面が、WindowsのようなGUIベースではなく、MS-DOSのようなCUIベースになっていたのもそれらしい。
また、アジト内でのパワードスーツの開発中に、パソコンのマザーボードが映るカットがある。直接このマザーボードを使うわけではなく、単に背景の小道具の一つとして登場しているのだが、CPUソケットやCPUクーラーのリテンション形状から判断して、Pentium 4対応のMicroATXマザーボードだと思われる。CPUソケットはSocket 478なので、いわゆるNorthwoodコアを採用したPentium 4に対応する、今から4,5年くらい前の製品であろう。こちらも、最新の電子製品の入手は困難で、古い機器を闇ルートから手に入れるという、テロリスト側の事情をよく表したカットだ。