名古屋鉄道(名鉄)は8月24日、この秋から瀬戸線に投入する新型車両「4000系」を同社尾張旭検車区(車両基地)で一般公開した。瀬戸線は名古屋市中心街の栄町駅から、「瀬戸もの」で有名な瀬戸市の尾張瀬戸駅までを結ぶ20kmあまりの路線で、他の名鉄線と接続しない同社唯一の単独路線。新型車両の登場は「6750系(2次車)」以来18年ぶり、台車を含む完全新造の型式としては「6600系」以来30年ぶりのことという。

この秋から名鉄瀬戸線に投入される新型車両「4000系」

会場には沿線住民や鉄道ファンらが多数詰めかけた

名鉄の車両は「スカーレット」「名鉄レッド」などと呼ばれる赤で全面塗装されたものが多いが、4000系はボディの素材にステンレスを採用し、塗装が不要のため銀色の外観となった。長年赤い電車に慣れ親しんだ沿線住民にとっては、この外観が最も大きなインパクトだという。ステンレス車体だけでなく、VVVFインバーター制御、完全停止まで効く電気式ブレーキ(回生付き)など、現代の新造電車では標準的な技術を多数採り入れた。

名鉄4000系の主要諸元
車体寸法 18,385×2,744×4,046mm(先頭車)、18,230×2,744×4,055mm(中間車)
重量 29.6t(先頭車)、35.3~35.6t(中間車)
車両定員 125人(座席44)(先頭車)、136人(座席52)(中間車)
最高運転速度 100km/h
起動加速度 3.0km/h/s
減速度 3.5km/h/s(常用)、4.0km/h/s(非常)
台車 ボルスタ付空気バネ台車
制御装置 VVVFインバータ制御(IGBT2レベル)
主電動機 全閉外扇形三相誘導電動機 170kW
駆動装置 歯車型継手式平行カルダン軸駆動
歯車比 5.65
制動装置 MBSA電気指令式 電空演算回生ブレーキ(純電気ブレーキ)
製造 日本車輌製造

省エネルギーやバリアフリーといった最近の鉄道車両に共通の課題に対応したことに加え、カーブが連続する、駅と駅の間隔が短い、住宅のすぐ近くを走行する、といったこの路線特有の事情にあわせた設計にもなっている。近年の鉄道では部品点数などが削減できる「ボルスタレス台車」と呼ばれるタイプの台車が一般的だが、4000系では急曲線に対応するためあえてボルスタ付きの在来型台車を採用。また、最高速度は100km/hと控えめながら、加速性能は名鉄本線系統の車両で2.0~2.3km/h/s(起動加速度)程度に設定されているところ、地下鉄乗り入れ車両と同等の3.0km/h/sとし、駅間が短くてもできるだけ高速で走れるようにした。コンプレッサーやエアコンも静音型のものを搭載し、駅近辺の住宅などに配慮した。

行先表示器はLED式。地下区間があるため、前面にも扉が用意されている

急曲線が連続する路線のためボルスタ付き台車を採用

レーザー溶接技術の採用により、従来のステンレスボディで見られたスポット痕のない美しい仕上げとなっている。パンタグラフはシングルアーム式

車内は、同線の従来車両で1両あたり6~8席だった優先席を10席に拡大するとともに、優先席付近のつり革やポールに色を付けて強調したほか、新たに車イス用スペースも用意した。また、名鉄の一般車両としては初めて、ドアの上に液晶ディスプレイを設置し、列車の現在位置などの情報を表示する。

優先席を各車両10席に拡大。付近のつり革やポールに色も付いた

出入口ドアの足元も黄色で強調されている

側面窓にはUVカットガラスを採用し、遮光幕は省かれた

ワンハンドル型のコントローラーとタッチパネル液晶ディスプレイを備える運転台

名鉄の通勤型車両としては初めてドア上に液晶ディスプレイ(15インチ)を設置。現在位置などを表示する