エンジンに関しては、V型8気筒(バンク角90度)、3400cc、600馬力以上、重量120kg、回転数制限10700rpmとなっているが、ホンダ、トヨタともに取材規制を敷いていたため、その差異などは不明。タイムやトップスピードに関しては後述するが、ホンダエンジンを搭載した315号車の方が上回っていた。なお、両エンジンともECU(テレメトリーのシステムの一部かも知れない)には、ザイテック製が使われている模様で、ユニットが左右のエアインテーク脇(カウルの内側)に取り付けられていた。エキゾーストパイプは、片側4-2-1の様で、最終的には左右が合わさって1本出しになる。燃料給油口は、左右両方にある。

ホンダエンジン

トヨタエンジン

ザイテック製のECUらしきユニット

エキゾーストパイプのうねりの様子

空気の取り入れは小型インダクションポッドとエンジン上部のエアインテーク

今回のテスト走行を担当したチームは、315号車がTeam 5ZIGENで、316号車がTEAM TOM'S。315号車側には、ホンダのエンジニアだけでなく、無限のエンジニアも加わっていた。テストドライバーは、315号車が金石年弘選手で、316号車がアンドレ・ロッテラー選手。今シーズン、金石選手はSG Team 5ZIGEN(5号車)に、ロッテラー選手はPETRONAS TEAM TOM'S(36号車)に所属するエース。その関係で、起用されたというわけだ。

ピットは316号車が1番、315号車が5番を使用。両陣営ともエンジンに関しては取材規制も厳しく、ピット内に入るのは不可との通達が成されていた(中には記者魂を発揮して、追い出されるまで撮影しているカメラマンや記者もいたが)。初日は、315号車はほとんど走れず、5周のみ。逆に316号車は初日から順調に走り出し、マッチングの良さではトヨタエンジンが一歩リードといった感じだ。2日目の午前中も315号車はあまり周回をこなせず、最初も出ていったと思ったらすぐにピットイン。Team 5ZIGENのメカニックがマシン左側に取りついて、激しい音を立てて金属を叩いている音がしたことから、マフラーの取り回しがまだうまくいってない様子である。午前のFN09による専有走行の時間帯は、10時から12時までだったのだが、それでもお昼近くには315号車も周回を重ねられるようになり、2台が別個に連続ラップを行うシーンも見られた。

ホンダエンジンを搭載した315号車の5番ピットの様子

315号車にテスト担当の金石年弘選手が乗り込む

トヨタエンジンを搭載した316号車の1番ピットの様子

316号車を担当したアンドレ・ロッテラー選手

午後は、最初に「新車両概要報告会」と銘打たれた記者会見。会見には、日本人初のフルタイムF1ドライバーとして著名なJRP会長の中嶋悟氏を筆頭に、JRP代表取締役社長の野口幸生氏、スウィフト・エンジニアリング代表取締役社長のヒロ松下氏、そのエンジニアのCASPER VAN DER SCHOOT氏、トヨタ自動車モータースポーツ部主査の永井洋治氏、本田技術研究所四輪開発センターMSブロック主任研究員の坂井典次氏の6名が出席した。会見はプレスルームではなく、2台のFN09と共にピットレーンで行われた。最初に挨拶した中嶋氏は、スウィフト・エンジニアリング、ホンダ、トヨタの各メーカーに謝辞を述べると共に、シャシーもエンジンも新しくなることに非常に期待を寄せている旨を語った。最後は、「これから来シーズンの開幕までにさらにさまざまなテストをして、十分な競争力を備え、素晴らしいシーズンにしていきたいと思いますので、応援よろしくお願いします」とコメントして締めくくった。続いてマイクの前に立ったのは、スウィフト・エンジニアリングのヒロ松下氏。同氏は、無事周回している様子を見て、「ほっとしました」と心境を吐露。ただ、2009年の開幕(暫定で4月4日富士スピードウェイ)までには、まだまだしなくてはならないことがあるとも。最後は、「いいクルマを作ってくれたな、と感謝してもらえるような車両に育てていきたいなと思います」として締めくくった。

記者会見の出席者。左から中嶋氏、野口氏、松下氏、SCHOOT氏、永井氏、坂井氏

フォトセッション。左から永井氏、中嶋氏、松下氏、坂井氏

午後のテストは、より実戦に近い状況を想定したものを実施。テール・トゥ・ノーズのバトルを想定してタンデムに2台連なって走行したり、オーバーテイクを実際に行ったりと、より迫力のある走行シーンを見せた。かなり接近した状態で縦に連なりながらコーナーを抜けていったりするので、特に富士スピードウェイの場合はパッシングシーンが増えるのではないだろうか。ホームストレートを完全にスリップについた状態で駆け抜け、そのまま変わらない感覚で1コーナーに飛び込んでいくなど、かなり安定しているように見えた。

現在の、F1を頂点とするヨーロピアンスタイルのオープンフォーミュラのシャシーは、どうしても前走車に接近するとその乱流の影響を受けてしまい、なかなかオーバーテイクができないという問題点がある(コースレイアウト的に抜きづらいという問題もあるが)。FN09は車体下面で発生させるダウンフォースの量が現行車両のFN06よりも非常に大きく、約1.5倍。315号車を担当した金石選手によれば、ダウンフォースの発生量が多い分、トップスピードは落ちるが、前走車に接近してもあまり車体が乱れないそうである。最終的に、ベストラップは315号車が1分26秒342、316号車は1分26秒852。トップスピードは315号車が303.286km/h、316号車が302.436km/hをマークした。

金石選手のドライブで、ピットを出る315号車

2台での走行ではポジションの入れ替えも行われた

テール・トゥ・ノーズを想定した走行。かなり接近して走っていた

ホームストレート(ピットレーン出口付近)でタンデム走行する2台

なお、この後のFN09に関する予定は、8月31日の富士スピードウェイでのフォーミュラ・ニッポン第7戦決勝日に、一般ファンへのお披露目となるデモ走行。9月21日の宮城県スポーツランドSUGOでの第8戦(最終戦)決勝日にもデモ走行の実施を予定している。

そして第2回先行開発テストだが、こちらは9月30日・10月1日にツインリンクもてぎで実施。担当チームは315号車が鈴木亜久里監督のARTA、316号車がCERUMO/INGINGで、ドライバーは現時点では発表されていない。シーズンオフとなるが、おそらく今シーズンの所属ドライバーが担当するものと思われ、実績から見てARTAはF1経験者の井手有治(今シーズンはARTAの55号車に搭乗)、CERUMO/INGINGはベテランの立川祐路(今シーズンはCERUMO/INGINGの48号車に搭乗)が予想される。

第3回先行開発テストは、10月27・28日を予定。スポーツランドSUGOで行われ、担当チームは2強、中嶋監督(中嶋氏はJRP会長と自チームの監督を兼任)率いるNAKAJIMA RACINGが315号車を、闘将・星野一義監督率いるTEAM IMPULが316号車を担当。こちらもドライバーは未定だ。おそらく、第3回も今シーズンの所属ドライバーが担当するものと思われるが、両チームともトップドライバーを2名抱えており、1日ずつ交代ということも考えられる。ちなみにTEAM IMPULは、07王者で2年連続王座が濃厚な松田次生(LAWSON TEAM IMPUL・1号車)と、06王者のブノワ・トレルイエ(LAWSON TEAM IMPUL・2号車)。実際には、TEAM IMPULは3台体制で、負傷欠場中の新人平手晃平(TP Checker IMPUL・20号車)もいる。NAKAJIMA RACINGは、小暮卓史(PIAA NAKAJIMA・32号車)、ロイック・デュバル(PIAA NAKAJIMA・31号車)という陣容だ。ほぼ1ヵ月おきのテストなので、第2回、第3回でどこまでクルマが進歩してくるかが楽しみなところである。