脳の膨大な情報を直接入力するインタフェース
これまでのコンピュータの入力インタフェースは、キーボード然り、何かしら意識をして入力をするものが普通であった。例えば感情であったり、無意識の情報を入力することはできない。そういった無意識の情報も含んだ、脳の持つ膨大な量の情報を入力できる装置として、Emotiv Systemsが開発した、脳波を利用するヘッドセット型の入力インタフェース「EPOC」が紹介された。
EPOCのデモンストレーションでは、ゲームプログラムの世界の中で、装着者が思考したり感情をあらわすことで、背景の色を変える、岩を移動させる……といった操作が出来ることが実践された。なお、このインタフェースはすでに実用化されているそうで、今回紹介されたヘッドセットも、ゲームコントローラーとして今年の年末あたりに発売が予定されているのだそうだ。
魔法の物質、プログラマブル・マター
SF作家のArthur C. Clarkeの有名な言葉で、「十分に進んだ技術は、魔法と区別がつかない」というのがある。Rattner氏がこれを引用し、「まさにそんな魔法のような技術」として最後に紹介したのが、プログラマブル・マターだ。
非常に小さなプログラム可能な物質を実現するというもの。これが無数に集まって物体を構成することで、その物体は自由に形状や色などを自由に変化させることができる。例えばコンシューマの用途では、携帯電話として使うときはポケットに入るようコンパクトな形状になるが、Webやメディア機能が使いたいときは画面やキーボードがある端末に姿を変えるモバイルコンピュータ、といったものが可能になるのだという。
今回は研究中のプログラマブル・マターとして、まずは「Catom」と呼ばれる円筒形で手のひらサイズの個体が説明された。このCatomはマイクロプロセッサとメモリを内蔵し、表面は各Catomを結合させるためのエレクトロニックマグネットになっている。まだ円筒形のため2Dの結合となるが、3Dの立体を構成できるよう、これを球体にして表面をエレクトロニックフィールドにするのが次の段階だそうだ。
ここで紹介されたCatomはまだ大きく、ナノスケールの魔法の物質の実現にはまだ程遠いように感じられるが、将来の計画として、シリコンチップの製造で利用される露光技術を使い、とりあえずはこれを一気に1mmの10分の1程度にまで持って行きたいという展望が語られている。その足がかりとして、当日は実際に露光技術を用いて作られたシリコンの半球体も披露されている。
さて、講演の終わりにRattner氏は「40年後がどうなっているのかは、誰にもわからないことだ」と話す。が、同時に「40年間、我々は当時は誰にも考えられなかったようなことを次々と現実にしてきたのだ」とも。……ターミネーターみたいな未来が来ないことを願いつつ。