DirectX 11完全対応GPU第1号はNVIDIAから?

今回、Direct3D 11の機能を活用したデモとしては、テッセレーションの仕組みをLOD(Level of Detail)に活用した地形描画エンジンのデモと、ジオメトリレベルの長髪を無数に生やせる頭髪表現のデモの二つが公開された。

なお、その二つとも、Geforce GTX 280上でのエミュレーション実行となっていたが、ソフトウェアレベルではDirect3D 11の実装がひとまずはできあがっていると言うことの証でもある。

近場は多ポリゴン(赤色領域)、中間距離はそれなりに(黄色領域)、遠方は低ポリゴン(緑色領域)で……という感じで動的テッセレーションを行った地形レンダリングのデモ

頭髪デモ。一本の髪の毛を物理シミュレーションし、ハル・シェーダでLODに合わせて分割レベルを決定、テッセレータで髪の毛を分割しつつ複製。ドメイン・シェーダで髪の毛を変移。そしてジオメトリシェーダで細い四角形ポリゴン化する

この流れからするとNVIDIAからDirect3D 11対応GPUが出てくることは間違いないが、その時期については一切明かされなかった。まだ、NVIDIAとしてもGeforce GTX 200シリーズをリリースしたばかりであり、来月、再来月……といった感じの、"超"短期的に登場してくることはないだろう。

Direct3D 11対応GPUがATIから出るのが先か、NVIDIAから出るのが先か、という点についても何とも言えない。

今回の「実物はないがエミュレーションでのデモはある」というNVIDIAのパフォーマンスは、DirectX 11対応GPUを早期リリースできるという自信にとれるが、ATIはATIで、すでにDirect3D 11的なテッセレータの仕組みをRadeon HD 2000シリーズで搭載しているので、ハードウェア・レベルでの機能実装のノウハウについてはNVIDIAに対してだいぶ先行している。どちらが先に動くは全く分からない。

そして、インテルのLarrabeeがDirect3D 11に対してどのような対応をしてくるのかも注目される。

実物は存在しないが、3Dグラフィックスハードウェア戦争は、すでにDirect3D 11を見据えた水面下での戦いが始まっている。

これまで様々なGPU独自機能として搭載されてきたテッセレーションの仕組みだが、DirectX 11オフィシャル機能として実装されるのは感慨深い

(トライゼット西川善司)